マーケット分析

第2部:この国の危機に、誰も気づいていない ― 円を守るための劇薬

前回、こう書いた。

金利は円の「価格」を動かす。 国力は円の「価値」を決める。

じゃあ、その国力はどう作るのか。

今日はそこを書く。 無理・無駄・ムラを削って、要点だけ。

この5つは、バラバラの問題じゃない

人が減る。 エネルギーは買うしかない。 借金は返せる見込みが立たない。 給料は上がらない。 通貨は安くなる。

指標状況
人口減少局面
エネルギー自給率先進国最低水準
政府債務残高対GDP比で先進国最悪
実質賃金数十年横ばい
為替歴史的円安が定着

これは別々のニュースじゃない。一つの病気の、5つの症状だ。

政治の処方箋は、少子化予算・補助金・減税。 どれも間違ってはいない。 でも、病気の進むスピードに、治療が追いついていない。

一番怖いのは、暴落みたいな分かりやすい形じゃなく来ること。 優秀な人が静かに海外に出ていく。 資本が静かに逃げる。 若者が「この国に賭ける理由」を静かに失っていく。

気づいたときには、もう遅い。

政治家は、結果で殴られればいい

前回「給与を削れ」と書いた。 今回、少し考えを変えた。

給与を一律に削っても、国家予算からすれば誤差レベル。 自己満足で終わる。

かといって単純に給料を上げても、優秀な人が集まる保証はない。 政治は成果が見えにくい仕事だから、報酬を上げても「居座る理由」が増えるだけだ。

自分の案はこう。

基本の歳費は今の半分に下げる。 実質賃金の伸び、対内投資額みたいな「国力の指標」に連動する成果報酬を、上限なしで乗せる。

国が強くなれば、政治家も稼げる。 国が弱くなれば、政治家の生活も苦しくなる。 成功報酬で稼ぐファンドマネージャーと同じ理屈を、なぜ国政には適用しないんだろう。

政治資金も、使った瞬間にオンラインで全部見える化する。 これは来月からでもできるはずだ。

もう一つ、正直に書きたいことがある。

選挙のとき「消費税ゼロ」みたいな暮らしに直結する公約を掲げて、大勝する。 なのに当選した途端、天皇制や国旗、副都心計画みたいな、生活に直結しない議案を優先し始める。

そういう場面を、何度も見てきた気がする。

なぜ、公職に就いたら、世のため人のために死力を尽くさないんだろう。 正直、悲しい。

だからこそ、公約と実際の仕事が、給料に直結する仕組みがいる。

相続税は廃止する。ただし条件付きで

前回は「資本移動を早められないか」くらいの弱い書き方をした。 もう一度、はっきり言う。

相続税は廃止する。

代わりに「資産循環促進税制」を作る。

  • 事業承継・新規投資・起業・住宅取得・教育に使った分は非課税
  • 使わずに5年以上眠らせた分には、年々強くなる保有税

持っているだけなら重く課税し、動かすなら課税しない。

金持ちが資産を持つこと自体を罰するんじゃない。 金持ちが資産を使わずに眠らせることを罰する。

国有資産は、外国資本より先に日本人に売る

ここが一番反発を受ける話だと分かっている。 それでも書く。

政府が持っている不動産・株式・インフラの権益。 これを開放していく議論は、これから増えるはずだ。

自分の主張はこう。

売却可能な国有資産は、一定期間、外国資本より先に日本人・日本企業に取得させる。

これはWTOの内国民待遇の原則にはっきり反する。 国際的には「あり得ない」と言われる政策だ。 それでいい。

「保護主義だ」と言われるだろう。 知っている。 でも今の日本は、平時じゃない。

人口が減り、円が弱くなり続け、優良な国内資産が構造的に「割安」になっている国は、放っておけば海外資本に買い占められていく。 その値上がり益を、日本人が受け取れないまま外に流れ続けるなら、国はもっと貧しくなる。

危機の中で、平時のルールを踏み外した国は、これまでにもあった。 今の日本には、この一線を越える価値がある。

エネルギーは思想じゃなく、ポートフォリオで語る

石炭が正しいか、原発が危険か、再エネがクリーンか。 その思想対立で議論を止めている場合じゃない。

  • 原子力:既存炉の再稼働を急ぐ。感情論ではなくコストと安全保障で判断する
  • 再エネ:蓄電・送電網とセットじゃなければ絵に描いた餅。インフラ投資を最優先にする
  • 石炭:はっきり言う。復活させていい

CO₂排出量が多いのは事実だ。 でも、安くて安定していて、既存のインフラと輸送網がそのまま使える電源を、脱炭素という掛け声だけで手放す余裕は、今の日本にはないと思う。

運輸部門とかほかの分野で減らして、国全体の収支で帳尻を合わせればいい。

一つのエネルギーに賭けるんじゃなく、ポートフォリオで組む。 投資の基本と同じだ。

国民を、納税者から投資家に変える

日本には、個人の金融資産が大量に眠っている。 その多くが預金のまま動いていない。

新NISAは良い一歩だったと思う。 自分はもっと踏み込みたい。

国が持つ資産の一部を裏付けにした「国民配当ファンド」を作る。 日本国籍を持つ全員に、生まれた時点から一定の持分を無償で渡す。

産油国が資源収入を国民に分配する仕組みに近い。 原資は、国有資産の整理や外貨準備の運用益あたりが候補になる。

生まれながらに「この国の株主」になる。 そうなれば、この国が成長するかどうかは、他人事じゃなくなる。 自分の資産が増えるかどうかに直結するから。

この提言は、平時のルールでは正当化できない

「乱暴すぎる」と思うかもしれない。 それでいい。 読んでほしいのはここからだ。

歳費の成果報酬化も、相続税の作り替えも、国有資産の売却も、国民配当ファンドも、平時の日本では通らない。 既得権益もあるし、法体系や国際協定との整合性の問題もある。

だからこそ、最初の問いに戻る。

今の日本は、平時なのか。

自分の答えはノーだ。 人口も、財政も、エネルギーも、実質賃金も、静かに、確実に弱くなっている。 それなのに、政治もメディアも、自分たち投資家も含めて、まだ「いつも通りの延長線上」で考えている。

足りないのは、政策の中身じゃない。 危機感の総量だ。

結論

今持っている資産を、将来の価値にちゃんと変えられるか。

会社を見るときは、いつもこの問いを立てる。

日本にも、同じ問いが当てはまる。

人材も、技術も、蓄積された富もある。 でも、それを未来の価値に変える決断を、誰も本気でしようとしていない。

劇薬を飲むか。 このまま静かに弱くなっていく道を選び続けるか。

自分は、飲むべきだと思う。

この記事に書いたことの多くは、今の日本では通らない。 それでも、書く価値はあったと思っている。