トレード日誌

『ザイム真理教』を読んで、数字を調べてみた

最近、森永卓郎さんの『ザイム真理教』を読みました。

読んだ直後に感想を書いてみたんだけど、自分の頭の中の疑問をそのまま並べただけで、数字が一つも入っていなかった。それだと本の感想というより、ただの独り言だなと思って、数字を調べてから書き直すことにした。

財務省について、それまで深く考えたことがなかった

大蔵省という名前は知っていたし、かつて大きな権限を持っていたことも、不祥事を経て財務省と金融庁に分かれたことも知っていた。

でも、それ以上のことは正直よく分かっていなかった。税金を集めて、予算を作って、財政を管理する役所。その程度の理解だった。

この本を読んで一番強く残ったのは「財務省は悪い」ということじゃなくて、**「なぜこんな仕組みになっているんだろう」**という疑問だった。

数字で見る「増税の30年」

疑問だけ抱えていても検証にならないので、まず消費税率の変遷を整理してみた。

時期消費税率
1989年4月3%
1997年4月5%
2014年4月8%
2019年10月10%(軽減税率8%)

税率だけ見ると単調な階段に見えるけど、税収の中身を見ると印象が変わってくる。消費税が税収全体に占める割合は、導入直後の1990年度はわずか6.0%だった。それが今では33.3%まで上がっていて、所得税(21.2兆円)や法人税(17.9兆円)を上回る一番大きな税収の柱になっている。しかも消費税が所得税を上回ったのは2020年度、つまりここ数年の話らしい。

35年かけて、税収の主役がじわじわ入れ替わっていた。これは本を読んだだけでは正直実感が湧かなかった部分で、数字を見て初めて「ああ、確かにそうなってるわ」と腹落ちした。

なぜ「増税が正しい」「減税は無責任」になるのか

財務省で働いている人も、一人の生活者のはず。給料から税金を払うし、買い物をすれば消費税も払う。生活者として考えれば税金は少ない方がありがたいはずなんだよね。

でも組織という視点で見ると話が変わってくる。増税は税収を増やす手段になる。国家財政を安定させるために税収確保が大事なのは分かる。でもそれが長い年月の中で「増税=正しい」「減税=無責任」という空気に固まってしまったなら、ちょっと危ういなと思う。

これは財務省の一人ひとりが悪いという話じゃなくて、組織にはその組織なりのインセンティブが働く、というだけのことなのかもしれない。

「財源がない」という言葉と、債務の実際の数字

選挙のたびに政治家は公約を掲げる。減税、給付、社会保障の拡充。でも実現しようとすると「財源がありません」の一言で止まる。

ここが気になって、債務の実際の数字も見てみた。日本の一般政府の債務対GDP比は2023年度で240%。2020年に過去最高の258%をつけたあと、そこから3年連続で下がっているらしい。理由は名目GDPが伸びる中で金利が低く抑えられてきたことが大きいみたい。

つまり「財源がない」という言葉の裏には、債務残高そのものだけじゃなくて、名目成長率と金利のバランスというもう少し複雑な事情もある。ここは森永さんの主張をそのまま信じるのでも、財務省の説明をそのまま信じるのでもなく、自分で数字を追わないと見えてこないところだと思う。

限られた予算を何に使うか決めるのが政治の仕事のはずだから、「財源がないからできません」で終わらせず、「じゃあ何を削れば実現できますか」まで踏み込んで議論してほしい。

投資家として読むと、企業分析とやってることが近い

決算を見るとき、売上や利益の数字だけ見て「儲かってる」と判断することはない。なぜその数字になったのか、誰がその数字を作ったのか、経営者にどんなインセンティブがあるのか、そこまで見にいく。

国家財政も同じ見方が要る気がする。「財源がない」と言われたら、その中身を見にいく。「増税が必要」と言われたら、税収構造の中で誰の負担が増えているのかを見にいく。数字そのものより、その数字が生まれる構造を見る。清原式でNC比率の裏側にある資産の中身を見るのと、感覚としては近い。

数字を調べてなお残った疑問

数字を調べてみて、財政に詳しくなったというより、逆に分からないことが増えた。

なぜ消費税が税収の3割を超えるところまで比重が移ってきたのか。なぜ「財源がない」の一言で公約が簡単にひっくり返るのか。この構造は誰にとって都合がいいのか。

まだ自分には答えが出ていない。ただ、この本を読んで一番良かったのは、財務省についての答えをもらったことじゃなくて、数字を自分で調べにいくきっかけをもらったことだったと思う。

投資でも同じ。誰かの答えを信じて株を買うんじゃなくて、自分で調べ、自分で考え、自分なりの答えを出す。国家財政についても、同じ姿勢で考えてみたい。