NC比率※2.11倍。自分の基準なら、文句なしのS級です。
千趣会を見つけたとき、最初に気になったのは大株主の構成でした。
JR東日本が約11%の株式を保有している。
通販という事業を持ちながら、なぜ業績がここまで悪化しているのか。
そんな疑問が浮かびました。
株式投資を始めてから、清原さんの『わが投資術』を参考に、NC比率を使って割安株を探しています。
数字で候補を絞り、決算資料を読んで、買うかどうかを考える。
今回は、数字だけなら魅力的に見えた千趣会を調べてみました。
結論から言うと、買いませんでした。
※NC比率は、流動資産と投資有価証券(70%で評価)から負債を引いた金額が、時価総額の何倍あるかを見た数字です。
まず、四季報の数字から会社の輪郭をつかむ
自分は銘柄分析を始めるとき、会社四季報オンラインのトップページを見ます。
- PER・PBR
- 予想配当
- 自己資本比率
- 株主構成
などを確認して、この会社がどんな状態なのかを一行でまとめます。
千趣会の業績を見ると、売上高は2021年12月期の約731億円から、2025年12月期には約421億円まで減少していました。
営業利益も赤字が続いています。
2026年12月期の当初予想は営業利益2億円の黒字でしたが、8月7日に発表された修正予想では、12億円の営業赤字に下方修正されました。
数字を見るだけでも、経営が厳しいことは分かります。
それでもNC比率は2.11倍。時価総額に対して、資産と負債の差額が大きい会社です。

資産の数字は、2026年6月末の決算短信のものです。株価は10月21日時点で96円、時価総額は約50億円で、このときのNC比率は2.11倍です。10月20日のランキングでは2.08倍、8月22日に計算したときは1.91倍でした。
自分の基準なら、まずは詳しく調べる候補に入ります。
資産はある。でも、本業で稼げていない
決算短信を読んで、気になったのは継続企業の前提に関する記載でした。
千趣会は何期も赤字が続いています。
短信には「継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在する」と記載されていました。
自分には、事業をこのまま続けていけるのかが問われるところまで来ているように見えました。
もちろん、この記載だけで倒産が近いと断定できるわけではありません。
ただ、NC比率が高いという理由だけで安心して買える会社ではないと感じました。
さらにキャッシュフローを見ると、2026年1〜6月の営業CFはマイナス30億7,500万円。
一方、投資CFはプラス98億5,400万円でした。
営業活動では資金が流出する一方、投資活動では大きな資金流入があったということです。
千趣会は、構造改革の一環として旧千葉コールセンターの土地と建物を売却しています。
固定資産の売却益も計上する予定でした。

大きな資産は、もう現金に変わっています。残る主要資産は岐阜県可児市の物流拠点で、有価証券報告書の時点では時価が開示されていません。
ただ、資産を売却して現金を確保することと、本業が回復することは別の話です。
2026年12月期の修正予想でも、純利益は固定資産の売却益によって収支均衡となる見込みですが、営業損益は12億円の赤字です。
自分が知りたかったのは、資産がどれだけあるかだけではありませんでした。
本業の赤字をどう止め、どうやって事業を立て直すのか。その道筋が見えるかどうかです。
社長の報酬も50%カット
8月7日の適時開示では、業績予想の下方修正とともに、役員報酬の減額も発表されていました。
社長の月額報酬は、従来の30%減額に追加で20%を減額し、合計50%の減額となります。社内取締役や執行役員などについても、減額幅が拡大されました。
会社は、通販事業における受注未達やデジタル施策の効果発現の遅れなどを、業績予想を下方修正した理由として説明しています。

通販事業の営業損失は、前年同期の16.4億円から13.0億円に縮小しています。新規・復活の購入会員も、前年同期より増えています。ただ、修正予想は下期に営業損失がほぼなくなる前提で、かなり強気です。
役員報酬の減額だけで、経営が最後の手段に出たとまでは言えません。
ただ、再建計画を進めている最中に、業績予想を大幅に下方修正せざるを得なかったことは事実です。
NC比率が2.11倍という数字からは見えなかった経営の厳しさが、決算資料を読むことで見えてきました。
NC比率が高ければ、株価は上がるのか
ここで、あらためて考えました。
自分はNC比率を、財布にたとえて考えています。1万円で買った財布を開けたら、2万円入っていた。
そんな状態の会社を探しているわけです。
でも、その2万円があるからといって、株価が上がるとは限りません。
会社が資産を守りながら事業を続けてきたのか。
それとも、事業がうまくいかなくなった結果、資産が残っているのか。
自分は、この違いを考える必要があると思いました。
千趣会については、後者に見えました。
もし、この会社の株を買うとしたら、自分が期待するのは本業の復活だけではありません。
資産の売却やTOBなどをきっかけに、資産価値が株主に還元される展開も考えられます。
ただし、これはあくまで自分の仮説です。
買収の動きが確認できているわけではありません。

高いNC比率があっても、その価値がいつ、どのような形で株主に返ってくるのか分からなければ、投資の判断は難しいのです。
次からは、NC比率の先を見る
今回の調査を通じて、NC比率の高い銘柄を見つけたら、次の3つを確認したいと思いました。
- 本業の回復で価値が上がるのか。 営業利益や営業CFを確認し、事業が資金を生み出せる状態に向かっているかを見る。
- 資産の価値が表に出る可能性があるのか。 資産売却やTOBなど、会社の資産価値が株主の利益につながる道筋があるかを考える。
- 株主還元に動いているのか。 配当や自社株買いなど、株主に利益を返す姿勢があるかを確認する。

①本業の回復は、営業赤字と営業CFのマイナスで、まだ見えません。②資産の価値が表に出る道筋は、本社が売却済みで、JR東日本の保有株の扱いも有価証券報告書の時点では決まっていません。③株主還元は、無配で、株主優待も廃止済みです。
もちろん、この3つを確認すれば必ず正しい判断ができるわけではありません。
それでも、NC比率だけで候補を選んでいたときより、買う理由を具体的に考えられるようになります。
千趣会は、NC比率2.11倍という数字だけなら魅力的に見えました。
でも、決算資料を読むと、本業の赤字が続き、資産売却による資金流入がある一方で、再建にはまだ課題が残っていました。
今回は見送りました。
この判断が正しかったかどうかは、今の時点では分かりません。
ただ、今回の調査で一つ分かったことがあります。
割安な株を見つけることと、その割安さが解消される道筋を見つけることは、別の作業だということです。
次にNC比率の高い銘柄を見つけたときは、財布の中身だけでなく、そのお金がどうやって株主の利益につながるのかまで調べてみようと思います。
