- 「この銘柄は割安だ」
- 「市場は今後強気になる」
日々、私たちの元には溢れんばかりの情報と「専門家の声」が届きます。
しかし、その前提となっている根拠は、本当に疑いようのない事実でしょうか?
17世紀、近代哲学の父デカルトは、当時の既存の学問すべてを疑うことから始めました。
彼が『方法序説』で示した思考のプロセスは、不確実なマーケットと対峙する現代の投資家にとって、最も強力な**「情報のフィルタリング・システム」**になります。
1. 徹底的疑念:誰の言葉も鵜呑みにしない
デカルトは、少しでも疑わしいものは一旦すべて「偽」として退けました。
投資の世界でも同じです。
- 「みんなが買っているから」
- 「高名なアナリストが推奨しているから」
といった権威や同調圧力は、分析の邪魔になるノイズでしかありません。
「自分の目で最新の決算短信を確認し、自分の計算式で導き出した数字以外は信じない」
この知的自立こそが、デカルトが到達した「我思う、ゆえに我あり」という不動の土台に相当します。
2. 「困難は分割せよ」:複雑さをシンプルに分解する
デカルトが示した4つの規則の中で、投資家に最も刺さるのが**「分析の規則(困難を細かく分割すること)」**です。
「この会社は成長するか?」という巨大で抽象的な問いのままでは、判断を誤ります。
- ネットキャッシュ比率はいくらか?
- 投資有価証券の「その他」の項目に何が隠れているか?
- 有利子負債の三点セット(短借、1年内返済長借、長借)の合計は?
このように、問題を最小単位までバラバラに分解し、一つひとつの事実を確認していく。
この積み重ねの先にしか、確実な投資判断は存在しません。
3. 「暫定的な道徳」:分析中も市場は動いている
真理を探究している間も、私たちは生活し、資産を運用し続けなければなりません。
デカルトは「真理が見つかるまでの仮のルール」として、既定の習慣や法律に従い、一度決めたら断固として進むことを推奨しました。
これは投資における「マイ・ルール(規律)」に通じます。
- 「分析が完了するまではキャッシュポジションを維持する」
- 「暴落時にはあらかじめ決めた銘柄を機械的に買う」
感情に左右されず、自分で決めた「暫定的なルール」を淡々と実行する。
この規律が、思考の自由を守るための盾となります。
結論:自分の「理性」をポートフォリオの核にせよ
17世紀、デカルトは神や権威に代わり、個人の「理性」を世界の中心に据えました。
21世紀の投資も同様です。
AIやアルゴリズム、SNSの喧騒が渦巻く中で、最後に頼れるのは、自分自身の頭で考え、分解し、納得したロジックだけです。
「困難は分割せよ」
このシンプルな言葉を、今日から私たちの分析ツールの最上段に置きましょう。
複雑に見える市場も、正しく分解すれば、自ずと進むべき道が見えてくるはずです。
