最近、メディアの論調が少しずつ変わり始めている。
2026年4月21日号の『週刊エコノミスト』の特集「EVはどこまで普及する?」を読んだ。
これまで市場を席巻してきた「EV一本足打法」への熱狂は、冷徹な物理法則と現実の前に、踊り場を迎えている。
1. 「走る時だけクリーン」という欺瞞
記事が指摘する通り、EVは製造過程で莫大なCO_2を排出する。
バッテリーに使用するリチウムやコバルトの採掘・加工には、内燃機関車の製造を遥かに凌ぐエネルギーが必要だ。
さらに、日本の電源構成の8割が火力発電である以上、EVに充電する電気そのものが「カーボン・ヘビー」なのだ。
自動車ジャーナリストの池田直渡氏によれば、ハイブリッド車(HV)がEVのCO_2排出量を逆転するには、約10年の歳月が必要だという試算もある。
つまり、「環境のためにEV」というロジックは、今の日本では極めて脆弱なのだ。
2. 世界の8割に、EVは届かない

驚くべきデータがある。
世界人口80億人のうち、安定した電力供給を受けられない人々が約8割にのぼる。
人工衛星の画像で夜の明かりを確認できない地域が、これほどまでに広いのだ。
彼らにとって、高価でインフラ依存度の高いEVは「選択肢」にすら入らない。
ここで浮上するのが、トヨタが粘り強く提唱してきた「マルチパスウェイ(全方位戦略)」の正当性だ。
HVや代替燃料(e-fuel)こそが、現実的な解であることは火を見るより明らかだ。
3. 5607 中央可鍛工業への影響を考える
このパラダイムシフトは、自分の保有銘柄「中央可鍛工業(5607)」にとって、追い風となるだろうか。
「不要になる技術」からの脱却:
市場は「EV化で鋳物部品は消える」と悲観してきたが、HVや次世代エンジンの継続は、同社の精密鋳造技術が今後も「稼ぐ力」を持ち続けることを意味する。
不当な低評価:
現在、PBRは0.3倍台。これは「将来性ゼロ」と断じられた企業の数字だ。しかし、EVシフトの停滞が認知されれば、この低評価は「過度の悲観」として是正されるだろう。
投資家としての結論
清原式でいう「ネットキャッシュ比率」が高く、かつ「市場の誤解」によって放置されている銘柄。
中央可鍛工業は、まさにその筆頭だ。
時代に逆行しているのではない。
時代が、ようやく現実(リアル)に追いついてきた。