2008年のサブプライムローン危機は、世界経済を揺るがす大規模な金融危機となりました。
では、中国発で同様の規模の危機が発生する可能性があるとすれば、どのようなシナリオが考えられるのでしょうか。
今回は、中国の経済状況とサブプライムローン危機の比較から、そのリスクと要因を探ります。
目次
中国発の金融危機が起こる可能性:サブプライムローン危機との比較
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1. 不動産バブルの崩壊
中国の不動産市場はすでにバブルの兆候
中国の多くの都市では、不動産価格が急騰し、過剰な投機が見られます。
特に恒大集団(Evergrande)のデフォルト危機が象徴的であり、過剰な借り入れによる成長が続いています。
このような背景から、不動産市場が崩壊すれば、銀行や投資家が抱える不良債権の増加につながる可能性があります。
サブプライム危機も、アメリカの不動産バブルが崩壊したことに端を発しました。
同様に、中国でも住宅市場の不安定さが金融システムに波及し、大規模な危機を招く恐れがあります。
中国の家計資産の60%以上は不動産だとは知りませんでした。 https://t.co/m5PCFhLnT2
— ゴールド相場師ゲオルグ (@georg_crypto) September 20, 2024
中国の家計資産の60%以上は不動産であることを考慮すると、その影響は甚大です。
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3. 地方政府の債務危機
地方政府が抱える巨大な借金
中国の地方政府は、インフラ整備や不動産開発に依存し、膨大な借金を抱えています。
これらの借金は「地方政府融資平台(LGFV)」を通じて行われることが多く、財務の透明性が欠如しています。
地方政府が債務不履行に陥る場合、国内外の金融市場に深刻な影響を与えるでしょう。
アメリカのサブプライム危機では、住宅ローンの適切な管理が行われなかったために、リスクが金融システム全体に波及しました。
同じように、中国の地方政府の債務問題も不透明なまま放置されれば、危機を引き起こす可能性があります。
3. シャドーバンキングのリスク
規制を回避する影の銀行
中国では、「影の銀行」と呼ばれる規制の外にある融資システムが急成長しています。
シャドーバンキングは、公式な金融システムの外で運営され、高リスクな融資を提供するため、もし経済が低迷すれば、不良債権が急増するリスクがあります。
さらに詳しく
中国のシャドーバンキングとは、正式な金融機関の外で行われる融資活動のことで、銀行規制を回避して高リスクな融資を提供します。主に不動産やインフラ開発への資金供給を行い、規制が緩いため不良債権の増加リスクが高まります。
サブプライムローン危機も、信用力の低い借り手に対する高リスク融資が問題となりました。
中国のシャドーバンキングが膨れ上がる中、同様の危機が発生するリスクが高まっています。
4. 輸出依存と世界経済の減速
中国経済の輸出依存
中国経済は長年、輸出に依存して成長してきました。
しかし、世界経済の成長が鈍化し、特に米中貿易戦争やアメリカの高金利政策が影響を与えています。
この結果、輸出が減少し、企業の債務不履行が増加するリスクがあります。
2008年のサブプライム危機では、アメリカの不動産市場に端を発し、世界中に波及しました。
中国経済が世界に与える影響力を考えると、同様に中国発の危機が世界経済に波及する可能性は高いでしょう。
5. 銀行システムの信用不安
不良債権の増加がもたらす銀行危機
中国の銀行システムは国有銀行が中心ですが、そのバランスシートには巨額の不良債権が存在する可能性があります。
特に地方銀行や民間銀行は、不透明な融資活動を通じてリスクを高めており、危機が顕在化するリスクが高いです。
アメリカの銀行も、サブプライムローン危機の際には、リスクの高い住宅ローン商品を大量に抱え、信用不安が広がりました。
中国の銀行も同様に、不良債権が顕在化すれば、信用不安が金融システム全体に広がる可能性があります。
まとめ
中国発の金融危機が発生する可能性は、不動産バブルの崩壊、地方政府の債務問題、シャドーバンキング、輸出依存経済の脆弱性、そして銀行システムの信用不安が複合的に絡み合うことで現実味を帯びます。
これらの要因が連鎖的に作用すれば、2008年のサブプライムローン危機に匹敵する深刻な事態が発生し、中国国内だけでなく、世界経済にも甚大な影響を与えるでしょう。
各国が中国の経済状況を注視し、適切な対策を講じる必要がありますが、危機の予兆を見逃さないことが肝要です。