マーケット分析

米国の労働市場、ドル安と円高、そして中国株の見通し ー 今知っておくべき5つのこと

本記事では、アジア市場を中心に、米国の労働市場の動向、ドル安と円高、そして中国株の見通しについて解説します。

また、私たち投資家が注目する社債市場や、米国政府による日本企業の買収阻止のニュースについても触れます。

この記事を読むことで、市場に影響を与えるこれらの要因を理解し、次の投資判断に役立ることが出来ます。


1. 米国の労働市場に警鐘

米国の労働市場は、2024年7月に求人件数が2021年初頭以来の最低水準まで低下したことが示され、米国債の利回りが世界的に下落しました。

これにより、トレーダーたちは、FRBによる0.5%の利下げを予測し始めています。

9月に発表予定の雇用統計では、雇用増加や賃金の上昇が期待されていますが、予想を下回れば、株式市場に調整が入る可能性があるとゴールドマン・サックスのスコット・ルブナー氏は警告しています。

グラフ: 米国の求人件数の推移と失業率の相関関係


2. 円高の進行

ドルが1週間以上ぶりに下落し、それに伴い日本円は1%以上上昇しました。

リスク資産が後退する中で、安全資産としての円の需要が高まっています。

特に、日銀総裁の上田和夫氏が、経済と物価が政策目標を達成すれば、借入コストを引き上げる姿勢を示したことで、円はさらに強含んでいます。

バークレイズの外国為替ストラテジストであるスカイラー・モンゴメリー・コニング氏は、「今週は伝統的なリスク回避のトレードが進んでおり、安全通貨としての円が注目されています」とコメントしています。

図表: ドル円日足


3. 中国株の見通し悪化

ウォール街の大手銀行の間で、中国株に対する見通しが悪化しています。

JPモルガンは、中国株の格付けを「オーバーウェイト」から「ニュートラル」に引き下げました。

その理由として、米国の選挙に関連するボラティリティの増加や中国経済の減速が挙げられています。

バンク・オブ・アメリカも、中国の経済成長率が今年5%を下回ると予測しており、ゴールドマン・サックスとJPモルガンの予測に追随しています。

同社のエコノミスト、ヘレン・チャオ氏は「中国政府の財政および金融政策は、国内需要を十分に回復させるには不十分です」と指摘しています。


4. 社債市場の熱狂

投資家は現在、社債市場に殺到しており、48時間で81件の投資適格債※の取引が成立しました。

ウーバーは、投資適格企業として初めて債券を発行しており、財務担当者は利回りが比較的低い今のタイミングを逃さず資金調達を行っています。

PGIMフィクストインカムのロバート・ティップ氏は、「企業が低いクーポンで債券を発行するなら、今が絶好のタイミングです」とコメントしています。

※投資適格債とは、元金や利子の支払いが確実と見込まれる、信用力の高い債券


5. ニッポンスチールの買収阻止

米国政府は、ニッポンスチールによるUnited States Steelの141億ドルの買収を阻止する準備を進めています。

この取引は、米国外国投資委員会(CFIUS)の審査を受けており、ジョー・バイデン大統領がその結果を待って決定を下す予定です。

早ければ今週中にも決定が下される可能性がありますが、この取引の阻止は、米国製鉄の今後の展望に影を落とすことになります。


まとめ

米国の労働市場、ドルと円の動向、中国経済の見通し、そして社債市場の熱狂的な取引状況など、いずれも今後の市場に大きな影響を与える重要な要素です。

特に、FRBの利下げ期待や中央銀行の政策変更によって、株式市場や為替市場にさらなる変動が予想されます。

私たち投資家は、これらの変化を見極め、戦略的なポートフォリオの再編を検討する必要があります。

 

Georg
この記事はブルームバーグの記事を参考にして書きました。