中国地方政府の財政危機が進行する中、世界経済は新たな不況のリスクに直面しています。
米国や欧州をはじめとする多くの国々が、中国との貿易や投資関係に依存しており、この危機がグローバルに波及すれば深刻な景気後退を引き起こす可能性があります。
本記事では、中国の経済危機がどのように世界経済に影響を与え、企業倒産や失業、消費低迷を通じて広がるリスクについて詳しく分析します。
目次
中国地方政府のデフォルトと世界経済への衝撃—新たな景気後退シナリオ
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1. 地方政府の財政破綻
中国の地方政府は、不動産開発や大規模インフラ投資に多額の借金を負っています。
近年、中国の不動産市場は低迷しており、多くの地方政府が税収や土地売却収入に依存しているため、借金返済が困難になっています。
2023年8月の日経編集員の滝田さんの投稿によれば、円換算で1300兆円の債務残高があるようです。
中国・政府債務残高:IMF資料を元に世界経済白書がグラフ化https://t.co/2Da1gAUZ7V
ーー融資平台の「隠れ借金」の大きさがうかがえよう。23年時点の融資平台の債務残高は、IMF試算で66兆元。円換算で1300兆円あまりである。まさに累卵之危。 pic.twitter.com/X1YgwXp7mJ— 滝田洋一 (@yoichitakita) August 14, 2023
もし一部の地方政府が破産すれば、デフォルト(債務不履行)を引き起こし、中国国内で深刻な金融不安が広がる可能性があります。
2. 金融機関への影響
地方政府が破産すれば、中国の銀行や金融機関が大量の不良債権を抱えることになります。
中国の銀行システムは国の経済の中心を担っており、この信用不安が広がれば、国内の金融市場は大混乱に陥る可能性が高いです。
資金不足が広がり、銀行は融資の引き締めを行い、企業や個人の経済活動が大きく縮小します。
中国の銀行が融資を引き締めると、企業や個人の経済活動が縮小し、GDP成長が鈍化、失業率上昇、中小企業の資金繰り悪化、不動産市場の冷え込みなどが起こる可能性があります。
これによりデフレリスクが増大し、地方政府の財政悪化や金融システムの不安定化という負のスパイラルに陥ります。
3. 不動産・建設業の崩壊
地方政府の破産によって不動産市場はさらに冷え込み、建設業や関連産業にも打撃が広がります。
中国経済は不動産と都市化に大きく依存しており、家計資産の60%超が不動産です。
この不動産バブルの崩壊は、深刻な経済的影響をもたらします。
具体的には、失業率が急上昇し、個人消費が低迷することで、内需が大幅に減退する可能性が高いです。
これは中国経済全体に波及する重大なリスクとなります。
Reutersによると、2024年9月12日、中国の不動産開発大手、中国恒大集団の創業者である許家印会長(65・写真)が数カ月前に深センの特別拘留施設に移送されていたことが、事情に詳しい消息筋2人の話で明らかになった。
中国の証券当局は今年3月、恒大集団を業績水増しや証券詐欺などの不正行為で処分。許会長は660万ドルの罰金を科され、恒大集団は1月に清算を命じられ
事実上の倒産ということになります。
4. 中国経済の縮小と輸出減少
中国経済全体が縮小すると、世界のサプライチェーンや貿易にも大きな影響を与えます。
中国は世界最大の輸出国であり、多くの国が中国の製品に依存しています。
日本とアメリカを例にして、どのように影響が及ぶか説明すると:
日本への影響:
中国経済の縮小により、日本の対中輸出が減少し、特に製造業に打撃。新エネルギー分野での中国依存度が高く、影響大。消費者は安価な中国製品の恩恵減少。これらが日本の経済成長率を最大1.3%押し下げる可能性。
アメリカへの影響:
新エネルギー分野での中国製品流入減少により、国内産業発展に影響。保護主義政策効果が迂回輸出で薄れる可能性。中国からの輸入減少で物価上昇圧力。ハイテク分野での競争激化。全体として経済成長率低下とインフレリスク増大。
このように、中国からの輸出が減少すれば、輸入国の企業や消費者にも影響が及び、世界的な景気後退が始まる可能性があります。
5. グローバル金融市場への波及
中国の金融危機は、アジアや新興市場に対する投資家の信頼を大きく揺るがします。
中国経済の影響力は非常に大きく、世界中の投資家がリスク回避に走ることで、株式市場や為替市場で急激な変動が生じます。
主要な発行地方政府として、広東省、江蘇省、浙江省、上海市、北京市などが挙げられます。
これらの地域は経済規模が大きく、インフラ投資需要も高いため、債券発行額も大きいと推測されます。
これらの債権の買い手として、
国内投資家:
- 中国の商業銀行(特に国有銀行)
- 保険会社
- 投資信託
- 年金基金
海外投資家:
- グローバル債券ファンド
- ヘッジファンド
- 外国の中央銀行や政府系ファンド
などが挙げられます。
中国政府の地方債開放プロジェクト
2015年以降、中国政府は地方債市場の対外開放を進めており、海外投資家の参入が増加しています。その中国政府の方針に沿う形で、「債券通」プログラムの導入され、香港経由で中国本土の債券市場へのアクセスが容易になりました。
このような背景をもとに、中国の地方政府が発行する債券を多くの国際投資家が保有しているため、債券市場の暴落が金融不安を加速させます。
ただし、具体的な数字や詳細な投資家構成については、中国の情報開示が限定的であるため、正確な把握は困難です。
それ故に、地方政府が債務超過に陥たときの影響は計り知れません。
6. 原材料価格の暴落
中国は世界最大の原材料消費国の一つです。
経済が縮小すれば、石油や鉄鋼、銅などのコモディティの需要が急減し、価格が大幅に下落します。
これにより、資源に依存する国々(ブラジルやロシアなど)は輸出収入が減少し、経済的な危機に陥る可能性があります。
日本とアメリカへの影響について分析すると、
日本への影響:
原材料輸入国として短期的にはメリット。製造業のコスト減少で競争力向上。しかし、デフレ圧力増大のリスク。資源国向け輸出減少の可能性。円高進行で輸出産業に打撃。長期的には世界経済減速の影響を受け、経済成長に悪影響の恐れ。
アメリカへの影響:
原材料価格暴落でエネルギー産業に打撃。シェールオイル企業の収益悪化、関連雇用減少の可能性。一方、製造業やサービス業ではコスト減少によるメリットも。輸入インフレ圧力低下で金融政策に余裕。全体として経済成長にはマイナス影響。
どちらにしても、長期的には世界経済減速の影響を受け、経済成長に悪影響の恐れがあります。
7. 世界的な景気後退へ
中国の経済危機は他の新興国や先進国にも波及し、グローバルな景気後退を引き起こします。
特に米国や欧州は、中国との経済関係が深く、貿易や投資が減少することで自国経済に深刻な影響を受けます。
特に、自動車、テクノロジー、工業製品などの産業は中国からの供給に依存しており、サプライチェーンの混乱やコストの上昇に直面します。
また、中国市場での需要減少がこれらの国の輸出企業の収益を圧迫し、経済成長を鈍化させます。
さらに、企業の倒産や失業率の上昇により、消費が落ち込み、需要の縮小がさらなる不況を招きます。
まとめ
中国地方政府の財政危機は、その波及効果が世界経済全体に広がるリスクを抱えています。
特に米国や欧州との貿易・投資関係が深いため、企業倒産、失業率上昇、消費の落ち込みといった負のスパイラルが発生する可能性が高まっています。
各国政府は迅速な政策対応を迫られますが、その効果には限界があり、長期的な景気停滞を避けるためには国際的な協調が不可欠です。
連鎖的な影響により、世界的な経済危機が引き起こされ、各国は景気後退に直面することが予想されます。