投資備忘録

なぜ自分は清原式を選んだのか

2026/01/29

─ 若さを武器にできない投資家のための「負けない構造」

同じ「バリュー投資家」という括りでも、
自分は「若さを武器にできる側」ではないと痛感した。


① 射程外だったはずの一冊が、思考を決定づけた

かぶ1000さんの本を読んだとき、
同じ「バリュー投資家」という括りでも、
自分とは立っている場所がまるで違うと感じた。

かぶ1000さんの投資は、
個人投資家が資産を築くうえで、
極めて完成度の高い一つの到達点だと思っている。

ただそれは、
自分が「動き続ける側」に立つことを
前提にした投資の世界でもあった。

読んでいるうちに、
「これは今の自分の時間軸とは合わないな」
という違和感が残った。

その違和感を意識する中で、
自分の投資スタイルを決定づけた一冊が、
清原達郎さんの『わが投資術』だった。

読み終えたときに強く残ったのは、
「このやり方なら、自分でもできるかもしれない」
という感覚だった。


② 清原式が信頼に値した理由

── 数字で示された「再現可能な座標」

特に印象に残ったのは、
割安小型成長株の定義が、感覚ではなく数字で示されていたことだ。

  • 時価総額:20億円以上〜500億円以下
  • PER・PBRが低い
  • ネットキャッシュ比率が1以上

「センス」や「経験」ではなく、
ここを見ろという座標がはっきり示されていた。

この時点で、
これは才能のある一部の人の投資法ではなく、
構造を理解すれば自分でも近づける投資法だと感じた。


③ 「後継者がいない」という一文が意味するもの

── 情報の非対称性が消える瞬間

そして何より刺さったのが、次の一文だった。

「自分には後継者がいないからです。私が蓄積してきたヘッジファンド運用のノウハウは
後継者には承継されません」

なぜ、後継者がいないと信頼度が上がるのか。

多くの投資本は、
成功体験を“伝説”として語る。
だが清原達郎の本は違った。

この一文は、
ノウハウの独占が終わった瞬間を示している。

つまりこの本は、「読まれて困ること」が書かれていない数少ない投資本だった。

もう自分が使い切る必要のない武器を、
そのまま差し出している。

  • だからこそ、出し惜しみがない
  • だからこそ、再現されても構わない思想として成立している。

つまりこの本は、
「勝ち方」ではなく
「勝てる場所の設計図」を開示した本だった。


④ 再現性が「本気で」公開された条件

── ファンドマネージャーという現実的な到達点

これまで多くの投資本を読んできたが、
自分の投資遍歴を、ここまで自分目線で、
後進のために書いた本には出会ってこなかった。

強いて近いと感じたのは、本田清六の著作「私の財産告白」くらいだ。

清原達郎の本を読んで初めて、
「自分もファンドマネージャーになれるかもしれない」
という現実的な期待を抱いた。

それは夢ではなく、
構造を理解すれば辿り着ける場所として描かれていたからだ。

この本は、単なるノウハウ本ではない。
投資人生の総決算に近い。

そう感じた瞬間に、
この投資法への信頼度が一段階上がった。


⑤ 若さを前提とした投資からの撤退

── 時間軸が合わなかったという結論

振り返ると、
自分は最初から清原式に辿り着いたわけではない。

早く結果を出したくて、
先物、FX、デイトレにも手を出した。

だが5年目にしてようやく分かったのは、
それらは反射神経、瞬時の判断力、集中力といった若さを前提にしたゲームだったということだ。

向いていなかったというより、
時間軸が合っていなかった。

そこで今は、
割安小型成長銘柄を最低でも株価2~3倍、もしくは3〜5年保有する
というスタイルに切り替えている。

この転換点には、
間違いなく清原式の影響がある。


⑥ なぜネットキャッシュ比率なのか

── 効率と爆発力を同時に取りにいく

清原式でネットキャッシュ比率を重視する理由は、単なる安全性のためではない。

一番の理由は、
効率と爆発力の両立だ。

ネットキャッシュ率が高い企業は、
暴落局面で株価と企業価値のあいだに
大きな「ねじれ」が生じやすい。

だが、そのねじれは永続しない。

現預金という動かない事実がある以上、
市場が正気を取り戻せば、
株価は資産価値に引き寄せられる

これは
「当たればラッキー」の投資ではない。
戻る確率が高い歪みを拾う投資だ。

実際に自分が何度も救われたのは、
業績よりも、
この「指値を入れる理由が数字で残る構造」だった。


⑦ なぜ小型株なのか

── 競争相手のいない戦場を選ぶ

小型株を選ぶ理由も、ロマンではない。

機関投資家が構造的に触れないからだ。

運用規模が大きい彼らにとって、
時価総額数十億〜数百億円の企業は
そもそも売買の対象にならない。

つまりそこは、
競争相手のいない戦場になる。

情報の質では勝てなくても、
立つ場所を選べば勝てる。

清原式は、その現実を冷静に突きつけてくる。

資金力が限られている個人投資家にとって、
小型株は「価格変動」ではなく「企業そのもの」を見続けやすい。
これは、長期で待つ投資を成立させる上で、意外と重要な条件だった。


⑧ なぜ「倒産しない企業」に執着するのか

── 時間を味方につけるための最低条件

これは性格の問題ではない。
時間を味方につけるためだ。

倒産しない限り、
企業価値が回復する時間は必ず残る。

逆に、倒産した瞬間に
どんな理屈も、どんな分析もゼロになる。

清原式は、
勝つための戦略ではない。
負けないための構造から逆算されている。

だからこそ、
長期で持ち続けることができる。

「倒産鑑定書」というアイデアを思いついたのも、
長期投資を前提にする考えから。

これは銘柄選定ではなく、
「時間を預けてもいいか」を判断するためのチェックリストだ


⑨ 売らない前提の投資は成立するのか

── 法人・担保・時間という選択肢

「株を売らないと資金がショートするのでは?」
そう言われることがある。

以前の自分もそう思っていた。

だが今は、

  • 証券担保ローン、
  • NISA枠の活用、
  • 法人を立ち上げて法人口座で取引する、

という選択肢を組み合わせることで、
売らない前提の投資も成立すると考えている。

自然人はいずれ死ぬが、法人は死なない。
もっとも、法人もキャッシュを失えば一瞬で死ぬ。

だからこそ、
清原式の「倒産確率を極限まで下げる思想」が生きる。


⑩ 投資本は、立ち位置を映す鏡

── 清原式を選び続ける理由

株式投資は、
「安く買って、高く売る」だけなのに、
人の性格、年齢、環境によって
戦略は千差万別になる。

それが、今さらながら面白い。

最近は、
新しい手法を探すためではなく、
自分の立ち位置を確認し、磨き直すために
投資の本を読んでいる気がする。

結局、投資の本は、
答えをくれるものではない。

自分がどこに立っているかを映す鏡なのだと思う。

清原式は、
誰にでも勧められる投資法ではない。

だが少なくとも、
若さ(行動力・瞬発力・集中力)を
武器にできない自分にとって、
これ以上、合理的で誠実な構造は見つからなかった。