企業分析

企業分析リポート:アイフル

銀行関連銘柄が軒並み高値圏にあり手が出ない。

そこで、インフレ局面で消費者金融などが今後伸びるとの予想のもとアイフルの企業分析リポートを作成する。

グレーゾーン金利問題などでイメージが悪い業界の銘柄は割安に放置されているのでは...。

目次

企業分析リポート:

アイフルは、独立系消費者金融の専業大手で、クレジットカード、割賦販売、事業者向けローン会社などを傘下に持つ総合金融グループ。

グレーゾーン金利問題や貸金業法改正の影響で経営が悪化し、2009年には事業再生ADRに入る。その後、大規模なリストラと財務再建を進め、2014年に再生期間を終了

2015年にはリスケジュール債務を通常借入へ戻すなど、完全な再建を果たした。

現在は海外展開、とくにタイ事業が収益の柱となっており、成長戦略として2027年3月期までの3年間で最大600億円のM&A投資を計画している。

再建を経て、再び成長軌道に乗りつつある独立系金融グループだ。

 

会社名とその由来

アイフルという名前は、 5つの英単語の頭文字を組み合わせた造語 なんだ。

  • Affection(愛情)
  • Improvement(努力)
  • Faithfulness(誠実)
  • Unity(結束)
  • Liveliness(活気)

これらの頭文字をつなげて AIFUL(アイフル) になったと公式に説明されている。

さらに、この社名は 社内公募で決まった という点も特徴的

沿革

1967〜1990:創業期〜事業基盤の確立

1967年
  • 現会長・福田吉孝氏が京都で個人経営の消費者金融業を創業 → アイフルの原点
1978年
  • 株式会社丸高(現アイフル)を設立
  • 京都・福岡・長崎・小倉で無担保ローン開始 → 地域密着の金融会社としてスタート
1982年
  • 関連3社を吸収合併し資本金5億円へ
  • 商号を「アイフル株式会社」に変更
  • 社名は社内公募(Affection / Improvement / Faithfulness / Unity / Liveliness) → 現在のアイフルが誕生
1984〜1985年
  • ATM稼働開始
  • 不動産担保ローン開始
  • 第1次スコアリングシステム導入 → 金融テクノロジーの導入が加速

1991〜2000:全国展開・上場・急成長期

1992〜1995年
  • 自動与信システム強化
  • 不動産担保ローン部門を拡大
  • 自動契約機「お自動さん」導入 → 店舗・自動化の両面で拡大
1997〜1998年
  • 消費者金融5社連絡会発足
  • 東京・大阪・京都の証券取引所に上場 → 大手金融企業としての地位を確立
1999〜2000年
  • 株式分割を複数回実施
  • 融資残高1兆円達成
  • 東証一部・大証一部に指定 → 最盛期へ突入

2001〜2010:多角化と金融危機、そして再建へ

2001〜2006年
  • ライフ、山陽信販などを次々と子会社化
  • 事業者ローン、信販、保証、カード事業へ拡大 → 総合金融グループ化が進む
2007〜2008年
  • 新経営理念を制定
  • 新株発行・社債発行で資金調達 → 積極投資フェーズ
2009年
  • グレーゾーン金利問題で経営悪化
  • 事業再生ADR手続きへ → 最大の危機を迎える
2010年
  • 大阪証券取引所の上場廃止 → 再建フェーズへ完全移行

2011〜2020:再建完了、海外展開へ

2011〜2014年
  • グループ再編
  • ビジネクスト(事業者ローン)を完全子会社化
  • タイで合弁会社A&A設立再建と海外進出が同時に進む
2015〜2017年
  • 上海でリース事業開始
  • タイで「A Money」ブランド開始
  • 創業50周年 → 海外事業が収益の柱に育ち始める
2018〜2020年
  • 事業再生会社・後払い決済会社を設立
  • グループ会社の商号を統一(AGブランドへ) → 金融×テクノロジー企業へ進化

2021〜現在:新領域(保険・IT・SES)へ拡大

2021〜2023年
  • あんしん保証が東証一部へ
  • 医療ローン、リースバック事業開始
  • ペット保険会社FPCを子会社化
  • SES(ITエンジニア派遣)企業を複数買収 → 金融+IT+保証+保険の複合グループへ
2024〜2025年
  • 中期経営計画2024を発表
  • ビットキャッシュ(電子マネー)を子会社化
  • SES企業を連続買収 → 非金融領域へ事業を大きく拡大

  • 1967〜1980年代:創業・ブランド確立
  • 1990年代:全国展開・上場・急成長
  • 2000年代:多角化 → グレーゾーン問題で経営危機
  • 2010年代:再建完了 → 海外展開(タイ・中国)
  • 2020年代:金融×IT×保証×保険×SESへ事業拡大

アイフルは、危機を乗り越えて再成長した「再建型グロース企業」。

 

📘 経営陣構成から読み取れる「アイフルの経営戦略」

アイフルの経営陣を見ると、同社がどんな未来を描き、どこに経営資源を集中させているかが非常に明確に浮かび上がる。 結論から言えば、アイフルは 「創業家主導 × 多角化 × リスク管理 × 海外展開」 を軸にした、再成長フェーズの企業だ。

① 創業家主導の強いトップダウン体制

  • 社長(福田光秀)と会長(福田吉孝)は創業家
  • リスク管理・内部監査を社長が直轄

→ 意思決定が早く、方向性がブレない。 再建を経験した企業だからこそ、トップダウンでの統制力を重視している。

② 非金融領域(カード・保証・電子マネー・IT)への多角化

  • ライフカード
  • ビットキャッシュ
  • 保証事業
  • データアナリティクス部門

→ 消費者金融依存からの脱却を明確に進めている。

特に、カード・保証・電子マネーはストック型収益で、景気変動に強い。 “金融×IT”の複合企業へ進化するための布陣が整っている。

③ コンプライアンスとリスク管理を最重視

  • コンプライアンス委員長は副社長
  • リスク管理委員長は社長

→ グレーゾーン金利問題で痛い経験をした企業らしい体制。

再建後のアイフルは「攻める前に守りを固める」姿勢が徹底されている。 審査モデル・内部統制・法務の強化は、海外展開にも直結する重要要素。

④ 海外展開(タイ・インドネシア)を支える実務陣の強化

  • タイの「A Money」が収益の柱に成長
  • インドネシアのオートローン事業も拡大
  • 審査モデル・保証・カード事業のノウハウを海外へ展開

→ 海外金融事業の拡大に必要な“審査力”を経営陣が重視している。

海外は金利が高く、成長余地も大きい。 ここに強い実務陣を配置しているのは、明確な成長戦略の表れ。

アイフルの経営陣は、「創業家の強いリーダーシップ × 実務エース × ガバナンス強化」というバランスの取れた布陣が特徴。

創業家が企業の長期的な方向性を示し、そのビジョンをもとに副社長・副会長といった実務派の幹部が事業運営を担う。そして社外取締役がガバナンスを監督することで、再建を経て成長フェーズに入った企業として理想的な経営体制を築いている。

特に注目すべきは、保証、カード、電子マネー、海外事業、データアナリティクスといった“非消費者金融領域”を担当する幹部が強力な点だ。

これは、アイフルが従来の消費者金融ビジネスに依存するのではなく、「金融×IT×保証×海外」を軸とした複合企業へと進化していることを示している。

事業部別・事業内容

① 消費者金融事業(アイフル本体)

アイフルの中核事業。 個人向け無担保ローンを中心に、審査モデル(スコアリング)を武器にした高収益領域。

主な内容

  • キャッシング(無担保ローン)
  • カードローン
  • 自動契約機「お自動さん」
  • ATM・ネットキャッシング

特徴

  • 審査モデルの精度が高い
  • 海外展開の基盤にもなっている

② 事業者金融(ビジネスローン)事業

中小企業・個人事業主向けの融資。 グループ会社「AGビジネスサポート」が中心。

主な内容

  • 事業者ローン
  • 不動産担保ローン
  • 売掛金担保ローン

特徴

  • 金利が高く収益性が高い
  • 景気敏感だが成長余地が大きい

③ 信販・クレジットカード事業(ライフカード)

アイフルの“非消費者金融”の柱。 カード発行・信用保証・決済事業を展開。

主な内容

  • クレジットカード発行
  • 信用保証
  • 分割払い(割賦)
  • キャッシュレス決済

特徴

  • ストック型収益
  • 顧客基盤が大きく、安定した利益源

④ 保証事業(AGギャランティー)

銀行や信販会社のローンを保証する事業。 近年急成長している“第二の柱”。

主な内容

  • 銀行カードローン保証
  • 事業者ローン保証
  • 家賃保証

特徴

  • リスクを抑えつつ収益を積み上げられる
  • 金融機関との提携が増加中

⑤ 海外金融事業(タイ・インドネシア・中国)

特にタイの「A Money」が急成長。 金利が高く、収益性が非常に高い。

主な内容

  • タイ:A Money(消費者金融)
  • インドネシア:中古車オートローン
  • 中国:リース事業

特徴

  • 高金利市場で利益率が高い
  • 今後の成長ドライバー

⑥ 後払い・決済事業(AGペイメントサービス)

ECの拡大で需要が急増している領域。

主な内容

  • 後払い決済(BNPL)
  • 電子マネー(ビットキャッシュ)

特徴

  • 若年層の利用が増加
  • フィンテック領域での存在感が強まっている

⑦ 保険事業(FPC:ペット保険)

新規参入だが成長余地が大きい。

主な内容

  • ペット保険の販売・管理

特徴

  • ストック型収益
  • 非金融領域への多角化の象徴

⑧ SES・ITソリューション事業(複数子会社)

2023〜2025年にかけて買収を連発して拡大中。

主な内容

  • ITエンジニア派遣(SES)
  • システム開発
  • デジタルソリューション

特徴

  • 金融×ITのシナジー
  • 収益の安定化に寄与

アイフルは今、従来の「消費者金融」中心のビジネスモデルから大きく脱却し、「金融×IT×保証×海外×決済×保険」を組み合わせた“金融テック複合企業”へと進化しつつある。

事業構造を見ると、個人向けローンはあくまで収益の基盤として機能し、その上に保証事業やクレジットカード、海外金融事業といった成長エンジンが乗っている。

さらに、後払い決済や電子マネー、ペット保険、ITソリューションなど、将来の柱となる新規領域も着実に拡大している。

 

🚀3年後の伸びしろ(どこが伸びるのか)

伸びしろが大きい順に並べるとこうなる。

1位:海外金融(タイ・インドネシア)

  • 金利が高い
  • 市場が伸びている
  • 競合が少ない
  • 審査モデルが強いアイフルと相性抜群

利益成長の主役。

2位:保証事業(AGギャランティー)

  • 銀行との提携が増えている
  • リスクが低く利益率が高い
  • ストック型で積み上がる

安定成長の柱。

3位:カード・決済(ライフカード・ビットキャッシュ)

  • キャッシュレス市場は右肩上がり
  • 信用保証も伸びる
  • 電子マネー事業も拡大

中期的に確実に伸びる。

4位:IT・SES(買収した子会社群)

  • 金融×ITのシナジー
  • 収益の安定化
  • 人材派遣市場は堅調

新しい収益源として期待大。

アイフルは、3年後には現在よりも確実に強い企業へ成長している可能性が高い。

その理由は大きく3つある。

まず、同社には複数の成長エンジンが存在し、事業リスクが分散されている点だ。従来の消費者金融に依存するのではなく、海外事業、保証事業、クレジットカード、決済、ITソリューションといった多様な領域が伸びており、仮に一部の事業が不調でも他の事業が補完する構造が整っている。

次に、経営陣が多角化戦略に本気で取り組んでいることが挙げられる。保証、カード、海外、ITといった成長領域の責任者を副社長クラスが担当しており、実務に強いエース人材を要所に配置することで、事業拡大を確実に推進できる体制が構築されている。

さらに、外部環境も追い風だ。

キャッシュレス決済の普及、海外の高金利市場の拡大、保証事業の需要増加、ECと後払い決済の成長など、複数の市場が同時に伸びており、アイフルの事業ポートフォリオと非常に相性が良い。

 

市場規模

📊 消費者金融の市場規模(日本)

検索結果によると、 消費者金融業界の市場規模は約0.9兆円(2022〜2023年時点)

さらに、金融庁データを基にした貸付残高は 3.0兆円(2022年度) とされている。

📝 市場規模の見方(2つの指標)

① 業界規模(売上ベース)=約0.9兆円

業界動向サーチのデータより → 消費者金融会社の営業収益ベースの市場規模

② 貸付残高ベース=約3.0兆円

金融庁の統計より → 実際に貸し出されている残高の総額

📈 市場のトレンド

  • 2022年度は貸付残高が 前年比2.3%増 と回復傾向
  • コロナ後の個人消費回復で新規成約が増加
  • 市場は横ばい〜微増の安定成長

🎯アイフルが属する消費者金融市場は、売上規模が約0.9兆円、貸付残高は3.0兆円とされており、市場全体は縮小ではなく「横ばい〜微増」で推移している。

業界はアコム・アイフル・プロミスといった大手が寡占化を進めており、競争環境はむしろ安定している状況だ。

こうした成熟市場の中でも、アイフルは保証事業、海外金融、クレジットカード、ITソリューションなどへ事業領域を広げることで、新たな成長余地を確保している。

消費者金融に依存しない多角化戦略を進めている点が、横ばい市場でも成長を実現できる大きな強みとなっている。

貸借対照表

決算年月日2021年3月31日2022年3月31日2023年3月31日2024年3月31日2025年3月31日
現預金等40,95044,448up43,251down56,917up60,608up
その他流動資産768,762836,353up966,697up1,133,662up1,276,330up
有形固定資産17,76516,908down16,238down17,092up34,154up
無形固定資産5,3066,737up18,099up14,349down19,795up
投資等30,57131,196up26,200down44,354up57,564up
総資産863,354935,642up1,070,485up1,266,374up1,448,451up
流動負債522,121584,471up600,325up769,807up810,685up
固定負債195,677197,271up294,087up298,657up419,843up
資本(純資産)合計145,556153,900up176,073up197,910up217,923up
負債資本合計863,354935,642up1,070,485up1,266,374up1,448,451up

※単位:百万円

🔥 ① 総資産は5年間で約1.7倍に拡大(863,354 → 1,448,451)

これは明確に 成長企業の動き

  • 海外事業の拡大
  • 保証・カード・ITなど非金融領域の投資
  • M&Aの積極化

これらが総資産の増加に直結している。

🔥 ② 流動資産(特に貸付金)が大きく伸びている

「その他流動資産」が 768,762 → 1,276,330 と 約1.6倍 に増加。

これは 貸付金(ローン残高)が伸びている=事業が拡大している ということ。

消費者金融だけでなく、

  • 事業者ローン
  • 海外ローン
  • 保証関連の債権 も増えていると考えられる。

🔥 ③ 有形固定資産が2025年に急増(17,092 → 34,154)

2025年だけ“倍増”しているのがポイント。

これは

  • M&Aで取得した会社の資産
  • システム投資
  • オフィス・設備投資 などが反映されている可能性が高い。

IT・SES企業の買収ラッシュ(2023〜2025) が影響していると見ていい。

🔥 ④ 無形固定資産も大きく増加(特に2023年)

5,306 → 18,099(2023年)

これは 買収によるのれん(Goodwill) が増えたサイン。

つまり、 アイフルは積極的に企業買収を行い、事業領域を広げている。

2024年に一度減っているのは、

  • 減損
  • のれん償却
  • 一部事業の整理 などがあった可能性。

2025年に再び増えているので、 M&A戦略は継続中 と判断できる。

🔥 ⑤ 投資有価証券・関連会社投資が増加(30,571 → 57,564)

これは 海外・IT・決済・保険などの新規領域への投資が進んでいる ということ。

特に2024〜2025年の伸びが大きい。

🔥 ⑥ 負債は増えているが、資本も増えており財務は健全

● 流動負債

522,121 → 810,685(約1.55倍)

● 固定負債

195,677 → 419,843(約2.1倍)

事業拡大のために積極的に資金調達している。

一方で、

● 純資産

145,556 → 217,923(約1.5倍)

内部留保が増え、財務基盤は強化されている。

負債比率は高いが、金融業なので問題なし。 むしろ 貸付金を増やすための“攻めの負債” と言える。

アイフルの財務推移をこの5年間で追うと、同社が明確に“拡大フェーズ”へと移行していることがはっきりと見えてくる。

貸付金の増加による本業の拡大に加え、海外事業の成長、保証やクレジットカードといった周辺金融領域の伸長、さらにM&Aを通じた非金融伸長、さらにM&Aを通じた非金融分野への進出など、多方面で事業規分野への進出など、多方面で事業規模を広げている。

IT・SES企業の買収や投資資産の積み上がりも総の買収や投資資産の積み上がりも総資産の増加に直結しており、事業ポ資産の増加に直結しており、事業ポートフォリオは年々多様化しているートフォリオは年々多様化している。

こうした動きは、アイフルが。

こうした動きは、アイフルが従来の「消費者金融」から脱却し、「金融×IT×保証×海外」を組み合わせ従来の「消費者金融」から脱却し、「金融×IT×保証×海外」を組み合わせた複合型企業へと進化していることた複合型企業へと進化していることを財務面からも裏付けている。

単一を財務面からも裏付けている。単一事業に依存しない成長モデルが形成事業に依存しない成長モデルが形成されつつあり、企業としての変革がされつつあり、企業としての変革が数字にも鮮明に表れていると言える数字にも鮮明に表れていると言える。

損益計算書

決算年月日2021年3月31日2022年3月31日2023年3月31日2024年3月31日2025年3月31日
売上高127,481132,097up144,152up163,109up189,054up
売上合計127,481132,097up144,152up163,109up189,054up
売上原価8,6627,240down7,297up7,578up13,449up
その他費用収益100,382112,523up114,512up133,714up153,089up
費用等合計109,044119,763up121,809up141,292up166,538up
売上総利益118,819124,857up136,855up155,531up175,605up
税引前当期利益18,14912,265down23,959up21,493down24,240up
当期純利益18,437
(14.5%)
12,334down
(9.3%)down
22,343up
(15.5%)up
21,817down
(13.4%)down
22,516up
(11.9%)down
当期純利益18,43712,334down22,343up21,817down22,516up

※単位:百万円

🔥 ① 売上高は5年間で約1.48倍に成長

127,481 → 189,054(+48%)

これは明確に「成長企業の売上カーブ」。

  • 2022:微増
  • 2023:しっかり増加
  • 2024:大幅増
  • 2025:さらに大幅増

保証・カード・海外・ITの多角化が売上を押し上げている。

🔥 ② 売上総利益も右肩上がり(118,819 → 175,605)

粗利が5年で +56,786(+48%) 増加。

売上とほぼ同じ伸び率なので、 利益率を維持したまま事業規模を拡大できている ことがわかる。

🔥 ③ 売上原価は低水準だが、2025年に急増

売上原価はずっと低い(金融業なので当然)。 ただし2025年に 7,578 → 13,449 と急増。

これは:

  • IT・SES事業の原価
  • 海外事業の拡大
  • 新規事業のコスト

が反映されている可能性が高い。

多角化の“投資フェーズ”に入ったサイン。

🔥 ④ 費用(販管費)は売上とともに増加

109,044 → 166,538(+53%)

費用の伸び率も売上と同じくらい。 つまり、 規模拡大に伴う自然なコスト増で、過剰投資ではない。

🔥 ⑤ 税引前利益は上下しながらも成長

  • 2021:18,149
  • 2022:12,265(減益)
  • 2023:23,959(大幅増益)
  • 2024:21,493(微減)
  • 2025:24,240(増益)

成長投資をしながらも利益はしっかり確保している。

🔥 ⑥ 当期純利益は“波はあるが安定成長”

  • 2021:18,437
  • 2022:12,334(減益)
  • 2023:22,343(大幅増益)
  • 2024:21,817(微減)
  • 2025:22,516(微増)

利益率は:

  • 2021:14.5%
  • 2022:9.3%
  • 2023:15.5%
  • 2024:13.4%
  • 2025:11.9%

利益率は10〜15%のレンジで安定。 → 多角化企業としては十分高い水準。

アイフルのPLを5年間追ってみると、同社が“売上拡大 × 利益安定”という理想的な成長パターンを描いていることがはっきりとわかる。

売上高は5年間で約48%増加し、粗利も同じく48%伸びており、事業規模が大きく拡大しているにもかかわらず、利益率は常に10〜15%のレンジで安定して推移している。

さらに、多角化に伴う投資フェーズにありながらも黒字を維持している点は、収益基盤の強さを示す重要なポイントだ。

この売上成長の背景には、保証事業、クレジットカード、海外金融、IT・SESといった新規領域の拡大があり、これらの多角化戦略が着実に数字へ反映されている。

つまり、アイフルは従来の消費者金融にとどまらず、「金融×IT×保証×海外」を組み合わせた複合企業へと進化しており、その変化が財務指標にも鮮明に表れていると言える。

 

キャッシュフロー

決算年月日2021年3月31日2022年3月31日2023年3月31日2024年3月31日2025年3月31日
営業活動によるキャッシュフロー20,281-15,629down-70,588down-74,208down-80,788down
投資活動によるキャッシュフロー-9,274-2,218up-8,947down-12,762down-35,099down
財務活動によるキャッシュフロー-18,81321,028up78,195up100,929up119,822up
現預金等の換算差額23220down79up89up60down
現預金等純増減額-7,5743,201up-1,261down14,048up3,995down

※単位:百万円

🔥 ① 営業CF:5年連続マイナス方向へ(=貸付金の増加)

年度営業CF
2021+20,281
2022-15,629
2023-70,588
2024-74,208
2025-80,788

営業CFがマイナスなのは 悪いことではない。 金融業の場合、営業CFがマイナス=貸付金が増えている=事業拡大 を意味する。

つまり、

  • 海外ローン
  • 事業者ローン
  • 保証関連の債権
  • カードローン

これらの“貸付残高”が増えている証拠。

アイフルは積極的に貸し出しを増やしている=成長モード。

🔥 ② 投資CF:年々マイナス幅が拡大(=M&A・設備投資)

年度投資CF
2021-9,274
2022-2,218
2023-8,947
2024-12,762
2025-35,099

2025年に大きくマイナスが増えているのがポイント。

これは:

  • IT・SES企業の買収
  • 海外事業の拡大投資
  • システム投資
  • 新規事業(決済・保険)の投資

が反映されていると考えられる。

多角化戦略を本気で進めているサイン。

🔥 ③ 財務CF:大幅プラス(=資金調達で成長を加速)

年度財務CF
2021-18,813
2022+21,028
2023+78,195
2024+100,929
2025+119,822

2022年以降、財務CFが大きくプラスに転じている。

これは:

  • 社債発行
  • 借入金の増加
  • 資金調達の積極化

を意味する。

貸付金増加とM&Aのために、外部資金を積極的に使っている。

金融業なので、これは自然で健全な動き。

🔥 ④ 現預金の純増減:投資しながらも資金は確保

年度現預金純増減
2021-7,574
2022+3,201
2023-1,261
2024+14,048
2025+3,995

営業CFがマイナスでも、財務CFで調達しているため、 現預金はむしろ増えている年が多い。

攻めながらも資金繰りは安定している。

アイフルのキャッシュフローを5年間追ってみると、同社がまさに“攻めのキャッシュフロー”で成長を取りに行っていることがはっきりと読み取れる。

営業キャッシュフローは継続してマイナスとなっているが、これは金融業特有の「貸付金の増加=本業の拡大」を意味しており、事業規模が順調に拡大している証拠だ。また、投資キャッシュフローもマイナスが続いており、M&Aや新規事業への積極的な投資が進んでいることがわかる。

一方で、財務キャッシュフローは大幅なプラスに転じており、外部資金を活用しながら成長スピードを加速させている。こうした積極投資の中でも現預金は安定しており、資金繰りに不安は見られない。

これらの動きを総合すると、アイフルは「金融×IT×保証×海外」を組み合わせた複合企業へ進化するために、意図的かつ積極的な投資を行っていることがわかる。まさに、拡大フェーズにある企業の典型的なキャッシュフロー構造と言える。

 

まとめ

アイフルは、かつてグレーゾーン金利問題で経営危機に陥った企業とは思えないほど、事業構造・財務・経営体制のすべてが“再成長モード”へと転換している。

消費者金融を基盤としながらも、保証、カード、海外金融、決済、保険、IT・SESといった多角化戦略が着実に成果を上げており、売上・総資産ともに大きく伸びている。財務面では貸付金の増加やM&A投資が積極的に進み、キャッシュフローも「攻めの投資」を裏付ける構造となっている。

経営陣は創業家の強いリーダーシップのもと、実務に精通した副社長クラスが成長領域を統括し、ガバナンスも強化されている。こうした体制は、再建を経て成長フェーズに入った企業として理想的であり、事業ポートフォリオの多様化と市場環境の追い風が相まって、今後の成長余地は大きい

総合すると、アイフルは「消費者金融」から「金融×IT×保証×海外」を軸とした総合金融テック企業へと進化しつつあり、3年後には現在よりも高い企業価値を持つ可能性が極めて高い。成熟市場の中でも独自の成長エンジンを複数持つことで、安定と成長を両立できる稀有な企業へと変貌していると言える。

追記:来年新NISAで500円(日足DB)に買い指値を入れる予定。その場合PER6.36、PBR0.68、配当2.40%となる。板を確認しながら下値で拾えるように指値を複数入れる戦略で行きます。