目次
景気ではなく「資本のルール」を追え
金利、為替、指数。
市場は常にマクロのノイズで満ちている。
しかし中長期の超過リターンを決めるのは、
資本に対するルール変更だ。
2023年以降のPBR1倍割れ企業への改善要請は、日本市場における「資本効率革命」の第一段階だった。
東証フォローアップ会議の議論を見る限り、この流れは一時的なキャンペーンではない。
段階的に対象市場を広げ、企業行動を変えようとしている。
2026年は、その圧力が中小型株へ本格波及する可能性がある。
1. スタンダード市場への圧力と“放置資本”
2025年11月時点で、改善要請への実質的な開示対応企業は約50%※。
裏を返せば、半数はまだ「資本効率の言語化」ができていない。
今後想定されるのは、
- 資本コストの明示要求
- ROE改善計画の具体化
- 低PBR企業の可視化強化
だ。
ここで重要なのは、
問題の本質はPBRではなく、資本収益率であるという点だ。
PBRは結果であって原因ではない。
※市場区分の見直しに関するフォローアップ会議 | 日本取引所グループ
2. ROE・ROICの分解 ― なぜPBRは1倍を割れるのか
PBRは理論的にこう表せる。
PBR ≒ ROE ÷ 株主資本コスト
つまり、
ROEが資本コストを下回れば、理論上PBRは1倍を割れる。
ではなぜ日本の小型株は低ROEなのか。
ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本
ここで問題になるのは分母だ。
過剰自己資本である。
さらに一段掘ると、
ROIC = NOPAT ÷ 投下資本
ROICは事業そのものの稼ぐ力を示す。
もしROICが資本コストを上回っていないなら、
その企業は“資本を燃やしている”ことになる。
多くの小型株は、
- ROICはそこまで悪くない
- しかし現預金が過大
- 結果としてROEが希薄化
という構造を持つ。
つまり、
事業はそこそこ、資本配分が下手
これが低PBRの正体である。
3. ガバナンス改革の本質 ― 「説明責任」の強制
2026年のガバナンス・コード改訂で焦点になるのは、
現預金の合理性説明だ。
企業は問われることになる。
- なぜこの水準の現金が必要なのか
- その資本は何%で運用されているのか
- 資本コストを上回る投資先はあるのか
答えられない企業はどうなるか。
選択肢は3つ。
- 成長投資
- 自社株買い
- 配当
いずれもROEを押し上げる。
つまり制度改革は、
資本回転率を上げる圧力装置として機能する。
ただしここで誤解してはいけない。
現金が多い=即上昇
ではない。
重要なのは、
ROICが既に資本コスト近辺まで改善可能な水準にあるかどうかだ。
赤字体質企業にキャッシュがあっても、それは単なる延命資金だ。
4. オーナー企業と資本構造イベント
親子上場や支配株主問題は、資本効率の観点から見るとこうなる。
支配株主がいると、
- 内部留保志向が強い
- 外部株主との利害不一致が起きやすい
- 資本効率より支配維持が優先される
しかし市場の圧力が強まれば、
- 非公開化(MBO)
- TOBによる再編
- 持株比率の見直し
が起きやすくなる。
特に、
- 浮動株が少ない
- ネットキャッシュ厚い
ROIC改善余地がある
この組み合わせは価格変動が大きくなりやすい。
だが、
思惑投機と制度変化は別物だ。
経営者の過去の還元履歴を見ること。
ここを外すと理論は崩れる。
5. 2026年は“強制還元元年”になるのか
結論から言えば、
一斉爆発は起きない。
だが、選別的リプライシングは起きる可能性が高い。
条件はこうだ。
- ROICが資本コスト近辺にある
- 現預金が過大
- 自己資本が過剰
- 経営に外圧がかかる
この4条件が揃ったとき、
PBRは数学的に修正されやすい。
PBRは感情で動くように見えるが、
最終的には資本収益率の問題だ。
投資家に求められる視点
重要なのは熱狂ではない。
- ROICは何%か
- 資本コストは何%か
- 過剰資本はどの程度か
- 経営は動く可能性があるか
これを一社ずつ検証すること。
制度変更は触媒にすぎない。
化学反応を起こすのは企業の収益構造だ。
市場はゆっくりと数式に追いつく。
その時間差が、超過収益になる。
2026年が歴史的転換点になるかどうかは断言できない。
だが一つ確かなことがある。
資本が遊んでいる企業は、いずれ説明を求められる。
資本主義は、案外ちゃんと数学でできている。
そして数学は、嘘をつかない📊✨
