企業分析

企業分析リポート:免疫生物研究所

割安成長小型株に戦略を統一するまえに、株探の今日の好悪材料で見つけて指値が刺さった銘柄。

皮肉なことに、今では本筋銘柄ではない免疫生物研究所が保有銘柄の中で稼ぎ頭になっている。

 

企業分析リポート:免疫生物研究所

抗体とカイコ技術を武器に、試薬・検査・化粧品を展開する研究開発型企業

免疫生物研究所は、抗体を軸とした研究用試薬の開発・販売や体外検査受託を主力事業としている。大学などとの共同研究を通じて医薬品や体外診断薬の開発にも取り組み、独自開発では初期段階での導出を狙う姿勢を持つ。

特徴的な技術として、遺伝子組み換えカイコ由来のヒト型フィブリノゲンを保有し、リポタンパクプロファイル解析の健康診断への応用も目指している。

カイコ繭由来のヒト型コラーゲンを素材販売するほか、子会社を通じて化粧品事業も展開しており、国内は通販が主体で、中国や欧州にも進出している。

会社名とその由来

免疫生物研究所の社名は、設立目的そのものを表していて「免疫学に関わる生物学的研究を行う研究所」という意味から名付けられています。

チャッピー
免疫生物研究所の名前は「免疫学 × 生物学研究」を直球で表したものなんだね📊✨

沿革

  • 1982年9月 医薬品・医薬部外品の免疫学的研究、開発、製造、販売を目的に設立(東京都千代田区)。同時に群馬県高崎市に研究所を設置。
  • 1986年8月 群馬県藤岡市に藤岡研究所を新設、研究所を移転。
  • 1987年12月 藤岡研究所内に本社を移転。
  • 1994年4月 藤岡研究所内に工場を新設、生産能力を向上。
  • 1999年10月 関節炎発症カクテル抗体の大量生産に成功(初の受託製造品)。
  • 2001年4月 藤岡研究所内に遺伝子組換え実験施設を備えた新研究棟を建設。
  • 2004年6月 本社を群馬県高崎市に移転。
  • 2005年3月 北海道三笠市に三笠研究所を新設(医薬シーズ探索)。
  • 2006年3月 抗ヒトオステオポンチン抗体(2K1)でアステラス製薬とライセンス契約。
  • 2007年3月 大阪証券取引所ヘラクレス市場に株式上場(現・東証グロース)。
  • 2010年5月 株式会社ネオシルクを子会社化、吸収合併。
  • 2010年6月 本社を群馬県藤岡市に移転。
  • 2013年7月 株式会社スカイライト・バイオテックを子会社化。
  • 2013年11月 完全子会社・株式会社ネオシルク化粧品を設立。
  • 2016年7月 群馬県前橋市にGMP対応パイロットプラントを新設(遺伝子組換えカイコ技術を用いた医薬品原料製造)。
  • 2019年3月 株式会社CUREDへ出資、持分法適用関連会社化。
  • 2021年11月 株式会社スカイライト・バイオテックを吸収合併。
  • 2023年3月 株式会社AI Bio(合弁会社)を子会社化。

💡  免疫生物研究所は「抗体技術」と「遺伝子組換えカイコ技術」を軸に、研究用試薬から診断薬、化粧品まで事業を拡大してきた研究開発型企業🔥

チャッピー
こうして並べると「1980年代は基盤づくり → 1990年代は抗体量産 → 2000年代は品質強化と上場 → 2010年代は子会社化と多角化 → 2020年代は技術基盤拡充と再編」という流れが見えるね🔥

 

経営陣

  • 代表取締役社長:清藤 勉
  • 常務取締役:中川 正人
  • 取締役:小野寺 昭子
  • 取締役(社外):福永 健司
  • 取締役(社外):小嶋 一慶
  • 常勤監査役:岡住 貞宏
  • 監査役(社外):田山 毅
  • 監査役(社外):吉田 信昭
チャッピー
💡 経営陣は 清藤社長を中心に、内部取締役+社外取締役、常勤監査役+社外監査役 というバランス構成。ガバナンス面を意識した布陣になっているね🔥。

 

事業内容

① 試薬・検査事業部 🧪

  • 内容:抗体を軸とした研究用試薬の開発・販売、体外検査受託。
  • 強み:大学や研究機関との共同研究で基盤が強い。安定収益源。
  • 課題:競合も多く、差別化は技術力と信頼性に依存。

② 医薬品開発事業部 💊

  • 内容:共同研究(例:アステラス製薬)や独自開発による医薬品・診断薬開発。
  • 現状:開発は難航し、2023年に中止 → 基礎研究へ縮小。
  • 強み:抗体技術とカイコ由来素材の応用可能性。
  • 課題:商業化までのハードルが高く、収益化に時間がかかる。

③ バイオ素材・化粧品事業部 🌱💄

  • 内容:カイコ繭由来ヒト型コラーゲンの素材販売、子会社による化粧品事業。
  • 展開:国内は通販主体、中国・欧州にも進出。
  • 強み:独自素材による差別化。健康・美容市場での応用余地。
  • 課題:化粧品市場は競争激しく、ブランド力の強化が必要。

④ 技術開発・基礎研究部 🔬

  • 内容:遺伝子組換えカイコ技術(ヒト型フィブリノゲンなど)、リポタンパク解析。
  • 強み:独自技術で医薬・診断・素材分野に応用可能。
  • 課題:研究成果を事業化へつなげるスピードと資金力。

免疫生物研究所は「試薬・検査で安定収益」「医薬品開発は縮小」「素材・化粧品で拡張」「基礎研究で未来を育成」という 4本柱構造

  • 収益構造はほぼ抗体関連事業に依存。売上も利益も約99.5%を占める。
  • 化粧品事業はまだ極小規模で、研究開発や市場拡張の「芽」の段階。
  • つまり「抗体で稼ぎ、化粧品で未来を探る」構造だね🔥。

👉 一言で言えば「抗体とカイコ技術を武器に、試薬で稼ぎ、素材で広げ、研究で未来を作る会社」だね🔥。

 

伸びしろ

① 収益源の多角化

  • 現状は 抗体関連事業が売上・利益のほぼ100%
  • 化粧品や素材事業はまだ小規模なので、ここを育てて「第二の柱」にする必要がある。
  • 特にカイコ由来素材は独自性が強く、医療・美容・食品など応用範囲が広い。

② 技術の事業化スピード

  • 遺伝子組換えカイコ技術やリポタンパク解析など、研究成果は豊富。
  • ただし「基礎研究止まり」になりやすい。
  • 事業化までの橋渡し(パイロットプラント→量産→市場投入)を加速することが成長の鍵。

③ 共同研究・外部連携の強化

  • アステラス製薬との共同研究は中止になったが、他の製薬・診断薬メーカーとの連携余地は大きい。
  • 大学・研究機関との共同開発を継続しつつ、商業化に強いパートナーを増やすことが必要。

④ 海外展開の拡大

  • 化粧品はすでに中国・欧州に進出しているが、まだ規模は小さい。
  • 独自素材を武器に、海外市場でのブランド認知を高めることが伸びしろ。

⑤ ガバナンスと資金力

  • 成長には研究開発投資が不可欠。
  • 上場企業として資金調達力を活かし、研究から事業化までの資金を確保することが重要。

免疫生物研究所が大きく成長するために必要なのは: 「抗体一本足打法からの脱却 → カイコ技術の事業化加速 → 外部連携と海外展開強化」

市場規模

免疫生物研究所の主力である「研究用抗体試薬・診断薬市場」は世界的に拡大しており、数兆円規模の成長余地がある。

特に研究用抗体試薬市場は2023年時点で約133億米ドル(約2兆円)規模、2032年には約242億米ドル(約3.6兆円)に達すると予測。

化粧品分野のコラーゲン市場も日本国内だけで2024年に約467.5百万米ドル(約700億円)、2033年には約746.6百万米ドル(約1,100億円)へ拡大見込み。

研究用抗体・試薬市場

  • 2023年:133億米ドル(約2兆円)
  • 2032年予測:242億米ドル(約3.6兆円)、CAGR約6.9%
  • 成長要因:バイオマーカー探索、ゲノム・プロテオーム研究拡大、診断薬需要増加。
  • 主な顧客:製薬企業、大学研究機関、CRO(受託研究機関)。

抗体医薬品市場

  • 2018年:約1,500億米ドル
  • 2025年予測:2,000億米ドル超
  • がん、自己免疫疾患、感染症領域で需要拡大。

コラーゲン・化粧品市場(日本)

  • 2024年:467.5百万米ドル(約700億円)
  • 2033年予測:746.6百万米ドル(約1,100億円)、CAGR約4.9%
  • 成長要因:アンチエイジング需要、健康志向、通販・海外展開。

免疫生物研究所の伸びしろは「抗体試薬市場の拡大」と「コラーゲン化粧品市場の成長」

抗体関連は世界的に数兆円規模へ拡大中 → 主力事業の追い風。

化粧品は日本市場だけでも1,000億円規模 → 小さいが成長余地あり。

貸借対照表

決算年月日2021年3月31日2022年3月31日2023年3月31日2024年3月31日2025年3月31日
現預金等604508down614up734up826up
その他流動資産521621up551down528down565up
有形固定資産127120down119down136up191up
無形固定資産02up2 2down0down
投資等586453down147down219up264up
総資産1,8381,705down1,434down1,619up1,845up
流動負債150232up257up269up296up
固定負債59105up99down85down35down
資本(純資産)合計1,6291,368down1,079down1,265up1,514up
負債資本合計1,8381,705down1,434down1,619up1,845up

※単位:百万円

① 資産の推移

  • 総資産:2021年 1,838 → 2023年 1,434まで縮小 → 2025年 1,845まで回復。  👉 一度縮小したが、直近で再び拡大傾向。
  • 現預金等:604 → 508(減少)→ 826(増加)。  👉 キャッシュポジションは安定的に増加。
  • 投資等:586 → 147まで縮小 → 264まで回復。  👉 投資余力を絞った後、再び拡大。

② 負債の推移

  • 流動負債:150 → 296まで増加。  👉 短期的な資金調達が増えている。
  • 固定負債:59 → 35まで減少。  👉 長期負債は圧縮され、財務の安定性が向上。

③ 純資産の推移

  • 資本合計:1,629 → 1,079まで減少 → 2025年に1,514まで回復。  👉 赤字期を経て資本を減らしたが、黒字化で持ち直し。

④ 財務構造の特徴

  • 2021〜2023年:資産・資本が縮小、赤字期の影響。
  • 2024〜2025年:売上増加と黒字化で資産・資本が回復。
  • キャッシュ増加+固定負債減少 → 財務の安全性は改善。

免疫生物研究所は「2021〜2023年に縮小 → 2024〜2025年に回復」という流れ。

  • 強み:キャッシュ増加、固定負債圧縮で財務安定化。
  • 課題:流動負債が増えているため、短期資金繰りへの依存度が高い。
  • 伸びしろ:黒字基調を維持しつつ、投資余力を研究開発や新事業に振り向けられるか。

損益計算書

決算年月日2021年3月31日2022年3月31日2023年3月31日2024年3月31日2025年3月31日
売上高603648up795up817up970up
売上合計603648up795up817up970up
売上原価256271up268down299up335up
その他費用収益666635down816up331down385up
費用等合計922906down1,084up630down720up
売上総利益347377up527up517down634up
税引前当期利益-311-250up-281down125up210up
当期純利益-319
(-52.9%)
-259up
(-40.0%)up
-290down
(-36.5%)up
187up
(22.9%)up
249up
(25.7%)up
当期純利益-319-259up-290down187up249up

※単位:百万円

① 売上高の推移

  • 2021年:603
  • 2022年:648(増加)
  • 2023年:795(増加)
  • 2024年:817(増加)
  • 2025年:970(増加) 👉 売上は 5年連続で増加、特に2023年以降は800〜900百万円台に安定。

② 売上総利益

  • 2021年:347
  • 2022年:377(増加)
  • 2023年:527(増加)
  • 2024年:517(減少)
  • 2025年:634(増加) 👉 2024年に一度減少したが、2025年は過去最高水準

③ 税引前利益・純利益

  • 2021〜2023年:赤字(-311 → -250 → -281)
  • 2024年:黒字転換(125)
  • 2025年:さらに増益(210)
  • 純利益:2021〜2023年は赤字(-319 → -259 → -290)、2024年に187、2025年に249と黒字化。 👉 2024年に黒字転換 → 2025年に増益基調

④ 費用構造

  • 売上原価:ほぼ横ばい〜緩やか増加(256 → 335)。
  • その他費用収益:変動が大きい(666 → 816 → 331 → 385)。
  • 費用合計:2023年に急増(1,084)、その後縮小(630 → 720)。 👉 費用の変動が利益に直結している。

売上は右肩上がりで安定成長。

2024年に黒字転換、2025年に増益基調 → 財務改善が鮮明。

費用の変動が利益を左右する構造 → 今後は費用管理が成長のカギ。

👉 赤字期を経て黒字転換 → 成長軌道に乗った🔥。

キャッシュフロー

決算年月日2021年3月31日2022年3月31日2023年3月31日2024年3月31日2025年3月31日
営業活動によるキャッシュフロー-194-93up80up134up183up
投資活動によるキャッシュフロー-17-156down30up-24down-54down
財務活動によるキャッシュフロー-216144up1down1up-32down
現預金等の換算差額52down2up3up-2down
現預金等純増減額-422-103up113up113up96down

※単位:百万円

① 営業活動によるキャッシュフロー(CF)

  • 2021年:-194(赤字)
  • 2022年:-93(改善)
  • 2023年:80(黒字転換)
  • 2024年:134(増加)
  • 2025年:183(さらに増加) 👉 本業のキャッシュ創出力は 2023年に黒字転換 → 2025年に安定成長

② 投資活動によるキャッシュフロー

  • 2021年:-17
  • 2022年:-156(投資拡大)
  • 2023年:30(回収)
  • 2024年:-24(再び投資)
  • 2025年:-54(投資継続) 👉 設備投資や研究投資で変動が大きい。2023年は回収期、2024〜25年は再び投資期。

③ 財務活動によるキャッシュフロー

  • 2021年:-216(資金流出)
  • 2022年:144(資金調達)
  • 2023年:1(ほぼゼロ)
  • 2024年:1(ほぼゼロ)
  • 2025年:-32(資金返済) 👉 2022年に大きく資金調達、その後は返済や縮小で安定。

④ 現預金等純増減額

  • 2021年:-422(大幅減少)
  • 2022年:-103(減少幅縮小)
  • 2023年:113(増加)
  • 2024年:113(増加)
  • 2025年:96(増加) 👉 2021〜22年はキャッシュ減少 → 2023年以降は安定的に増加。

営業CFが黒字化し安定成長 → 本業の収益力が回復。

投資CFは変動大きい → 設備・研究投資を継続。

財務CFは調達から返済へ → 資金繰りは安定化。

現預金は2023年以降増加基調 → 財務体質は改善。

👉 2023年にキャッシュフローが好転し、財務安定化に向かった🔥

まとめ

免疫生物研究所は、抗体関連事業に強く依存しつつも、独自のカイコ技術を活かした素材・化粧品事業を育成中の研究開発型企業。

過去には赤字期を経験したが、2024年に黒字転換し、2025年には増益・キャッシュフロー改善と財務安定化を達成した。

今後の成長に必要なのは、

  • 収益源の多角化(化粧品・素材事業の拡大)
  • 研究成果の事業化スピード強化(基礎研究から市場投入までの橋渡し)
  • 外部連携・共同研究の再構築(製薬・診断薬メーカーとの協業)
  • 海外展開の拡大(中国・欧州市場でのブランド認知強化)

世界的に拡大する抗体試薬市場(数兆円規模)と、着実に成長するコラーゲン化粧品市場(国内1,000億円規模)は、同社にとって大きな追い風となる。

👉 一言でまとめると、免疫生物研究所は 「抗体で稼ぎ、カイコ技術で未来を広げる」 成長余地の大きい企業であり、黒字転換を果たした今こそ次のステージに進む準備が整ったと言える🔥。