マーケット分析

防衛産業は“儲かる”事業へ進化するのか?注目銘柄を徹底解説

2024/09/16

日本の防衛関連銘柄が、これまでの「地政学リスクへの反応」から「収益性のあるビジネス」へと変わりつつあります。

米中対立や北朝鮮の挑発、そして日本政府の防衛力強化を背景に、防衛産業は新たな成長分野として注目されています。

本記事では、日本の防衛関連企業の収益性や防衛産業の将来性を、具体的な銘柄とともに解説します。

防衛産業に今、投資する価値はあるのか?その答えを一緒に考えましょう。

 

日本の防衛産業の現状と変化

かつて、日本の防衛関連銘柄は、地政学的リスク(注:地域の政治的・軍事的なリスク)発生時に一時的に注目され、リスクが収まるとともに忘れ去られるケースが多く見られました。

北朝鮮のミサイル発射時には、火薬や砲弾関連の小型株が買われ、危機が過ぎると売られるという動きが繰り返されてきました。

しかし、収益面では防衛省向けの企業の採算性は決して高くなく、撤退する企業も少なくありませんでした。

市場規模が限定的であったため、持続的な利益を期待するのが難しい環境でした。

転機となったのは、日本政府が2022年12月に発表した新しい「防衛3文書です。

ここがポイント

この文書に基づき、防衛費が2027年度までに43兆円に達する計画が進められ、防衛産業にとっては大きなビジネスチャンスが到来しています。

さらに、防衛装備品の発注における営業利益率が最大15%に引き上げられ、企業にとってより魅力的な分野へと変わりつつあります。

 

転機になったポイントまとめ:

  1. 日本政府が2022年12月に発表した新しい「防衛3文書
  2. 防衛費が2027年度までに43兆円に達する計画
  3. 防衛装備品の発注における営業利益率が最大15%

防衛3文書で国の防衛に対する基本方針が明示されました。2027年までに43兆円の予算が計上され、具体的な防衛装備品の発注計画も公開されています。営業利益率15%という数字も示されており、これらの情報が見える化されたことで、大きな安心感があります。

どの次に具体的な8つの注目銘柄を見ていきます。

 

注目する8つの防衛関連銘柄

以下の8銘柄は、日本の防衛産業において重要な役割を担い、政府の防衛予算増加の恩恵を受けている点が注目されます。

三菱重工業や三菱電機はリーダー企業として、スバルや川崎重工は航空機・潜水艦製造に強みを持ち、IHIは戦闘機エンジン開発をリード。

日本製鋼所や東京計器、豊和工業も防衛関連製品で成長が見込まれ、業界全体の需要拡大が期待されています。

1. 三菱重工業(7011)時価総額:2兆8,000億円

防衛産業のリーダー企業としての役割
三菱重工業は、日本の防衛産業において中心的な存在です。

2024年3月期の「防衛・宇宙事業」の受注高は1兆8,781億円(前年比3.4倍)に達し、防衛力強化の追い風を受けて大幅に成長しています。

特にスタンド・オフ防衛能力に関連する案件は、敵の射程圏外から攻撃する技術であり、今後の防衛戦略において重要な役割を担います。

防衛予算の増加に伴い、三菱重工業はさらなる成長を見込んでいます。

日経新聞 2023年11月22日:三菱重工、防衛宇宙事業1兆円に倍増 予算増額が追い風

記事要約:三菱重工は、防衛宇宙事業の売上高を2026年度に約1兆円に倍増させる見通しです。政府の防衛予算増額が追い風となり、事業利益率は10%を目指します。長射程ミサイルや次期戦闘機などの開発に注力し、IT・電子分野で人員を2〜3割増やす計画です。設備投資も増強し、今後数年で高水準の売上高を維持する見込みです。

 

2. 三菱電機(6503)時価総額:3兆1,000億円

防衛事業の強化に積極的
三菱電機は、2023年10月に防衛装備品の開発と生産のための新たな生産棟を建設する計画を発表しました。

主力分野としてレーダーシステムミサイルに注力し、2025年には防衛事業に約1,000名の増員を予定しています。

防衛産業への積極的な投資により、同社の長期的な成長が期待されます。

 

3. スバル(7270)時価総額は2兆5921億円

主な業務: 航空機、防衛関連製品
現状: スバルは、航空機やヘリコプターの製造で知られる企業です。

防衛分野では、自衛隊向けのヘリコプターや航空機の開発・製造に携わっており、これが同社の収益の一部を占めています。

将来性: 航空機関連の需要増加により、スバルの防衛部門の成長が見込まれています。

特に、ヘリコプターの需要が今後も堅調に推移することが予想されます。

 

4. 川崎重工業(7012)時価総額:5,500億円

防衛関連事業の拡大
川崎重工業は、自衛隊向けの潜水艦航空機を製造する日本の総合重機大手です。

2024年3月期の「航空宇宙システム」セグメントの受注高は6,926億円(前年比2倍)に達し、防衛省向けの受注増加やボーイング向けの需要拡大が成長を後押ししています。

防衛力強化の中で、同社の防衛関連事業も引き続き成長が見込まれます。

 

5. IHI(7013)時価総額:5,200億円

次期戦闘機のエンジン担当企業としての地位

IHIは、防衛事業を成長分野として位置づけ、2030年までに売上高を2,500億円に拡大し、利益率を10%にする目標を掲げています。

特に次期戦闘機のエンジン開発で重要な役割を担っており、日英伊の3カ国によるグローバル戦闘航空プログラム(GCAP)でも主導的な役割を果たす見込みです。

これにより、IHIの防衛事業は今後の成長を支える重要な要素となっています。

 

6. 日本製鋼所(5631)時価総額:2,000億円

多岐にわたる防衛関連事業

日本製鋼所は、装甲車、火砲、ミサイル発射装置など多様な防衛関連製品を展開しています。

中期経営計画では、2029年までに防衛関連売上高を800億円(前期比3.2倍)に拡大することを目標としており、防衛事業が同社の成長エンジンとなる見込みです。

同社は火力や原子力分野においても鋳鍛鋼の世界大手としての地位を持ち、防衛産業でもその技術力が重要な強みとなっています。

 

7. 東京計器(7721)時価総額:450億円

防衛省向け製品に特化した成長企業

東京計器は、防衛省向けの機器を中心に、航空機器や通信機器の分野でも成長を見せています。

2024年3月期には、防衛・通信機器部門の受注残高が前年比51%増336億円、受注高は同36%増73億円に達しました。

特に艦艇搭載機器や海上保安庁向け新製品の納入が同社の成長を支えています。

防衛予算の増額に伴い、東京計器の成長も引き続き期待されます。

 

8. 豊和工業(6203)時価総額: 約200億円

主な業務: 豊和工業は、自衛隊向けの小火器(ライフル)や重火器の製造で知られています。また、産業機械の製造も行っており、防衛分野では国内での独自技術を強みにしています。

特に、同社が提供する防衛装備品は、日本の防衛力強化に寄与するものとして注目されています。

将来性: 自衛隊の装備更新や、国際情勢の変化に伴う防衛力の増強計画により、豊和工業の製品が今後も安定した需要を見込むことができます。

特に、国内での小火器製造においてほぼ独占的な地位を持つため、競争が比較的少ない点が強みです

このように、豊和工業は大企業に比べて規模が小さいものの、防衛関連で重要な役割を果たしており、ポートフォリオに含める価値のある企業です。

 

防衛産業は今後どうなるのか?

防衛産業は、従来の低採算性から脱却し、より収益性のある事業へと変貌を遂げつつあります。

日本政府の防衛予算増額や防衛装備品発注における利益率引き上げが、企業にとって魅力的な成長機会を提供しています。

特に、三菱重工業、川崎重工業、IHIのような企業は、今後も日本の防衛戦略の中心的な役割を果たすことが期待されます。

このような状況下で、防衛関連銘柄は短期的なリスク要因を超え、中長期的に魅力的な投資先として注目されるでしょう。

 

まとめ

防衛関連銘柄は、地政学リスクだけでなく、長期的な収益性を持つビジネスへと変貌しています。

政府の防衛予算の増額や営業利益率の引き上げが企業の業績を後押しし、今後もこのトレンドは続くと見られます。

防衛産業に投資することで、収益性と安定性を兼ね備えたポートフォリオの構築が可能です

注目する8つの防衛関連株はすべて配当が出るので、投資家にとって一考の価値がありますよね。