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ゴールドが「バックアップマネー」として選ばれる理由とは?

ゴールドは今、静かなブームを迎えています。

今年に入ってから、米ドル建てで主要な株式市場を上回るパフォーマンスを見せており、その背景には「バックアップマネー」としての根本的な価値が見直されていることが挙げられます。

この記事では、ゴールドの価格上昇の背後にある要因を探りながら、個人の資産運用におけるゴールドの位置づけについて考察します。


タイトル: ゴールドが「バックアップマネー」として選ばれる理由とは?

1. ゴールドの価格上昇を牽引する要因

今年、ゴールドの価格は静かに、しかし確実に上昇を続けており、主要な通貨建てで新たな高値を記録しました。

特に注目すべきは、ゴールドバーの価値が初めて100万ドル※を超えたことです

この価格上昇を支えているのは、富裕層によるゴールド保有欲の高まりです。彼らは安全資産としてゴールドを選び、保管庫に保管することで資産を守っています。

※ゴールドバーは通常、400トロイオンス(約12.4キログラム)で取引され、1オンスあたり2,500ドルに達すると、バーの価値は100万ドルになります。

 

2. ドルと金利に対するゴールドの反応

これまで、ゴールド価格は米ドルや米国の実質金利に強く影響されてきました。

しかし、COVID-19以降、その相関性が薄れていることが注目されています。

従来の金利変動が価格に与える影響が小さくなっている背景には、ゴールド自体が持つ「バックアップマネー」としての価値が再評価されているからです。

バックアップマネーとは聞き慣れない言葉だと思うんので、その意味と事例について以下、説明します。

 

バックアップマネーとは

バックアップマネー(fallback money)とは、通常の金融システムや通貨が機能しなくなったり、信用が失われたりした場合に価値を保つための代替手段として用いられる資産や通貨のことを指します。

この概念は、特に以下のような状況に関連しています。

1. 金融システムの不安定性
  • 通常の通貨や金融システムが機能不全に陥る、もしくは信頼性が低下する場合に備えて、保有者が価値を保持するために使用できる資産がバックアップマネーです。例えば、インフレーションやハイパーインフレーションが進行している場合、法定通貨の価値が急激に低下する可能性があります。このような状況では、バックアップマネーとしてゴールドやビットコインなどが価値を保つ手段として重視されることがあります。
2. 法定通貨への信頼喪失
  • 政府や中央銀行が発行する法定通貨への信頼が失われた場合、人々は他の信頼性のある資産に価値を求めることが多くなります。このような資産がバックアップマネーとして機能します。歴史的には、金がこの役割を果たしてきました。金は、特定の政府や金融機関の信用に依存せず、普遍的に価値を認められているため、危機時における価値保存手段として選ばれることが多いです。
3. 地政学的リスクや経済的不安定
  • 地政学的リスクが高まると、特定の国や地域の通貨や金融システムが機能しなくなるリスクが増大します。このような状況では、バックアップマネーとして機能する資産(例:金やシルバー)が重宝されます。これにより、価値を保ちつつ、リスクを分散することが可能です。
実例
  • 金(ゴールド): ゴールドは長年にわたり、バックアップマネーの代表的な例として機能してきました。特定の国の通貨が信用を失ったり、世界的な経済危機が発生したりした場合、金が安定した価値保存手段として選ばれます。
  • ビットコイン: デジタル資産の中でも、ビットコインは一部の人々にとってバックアップマネーとして見なされています。これは、中央集権的な金融機関や政府の管理外にあり、デジタル通貨としての特性を持つためです。

バックアップマネーは、経済や金融システムのリスクを軽減するための重要な役割を果たします。それは不安定な状況下で、価値を維持するための保険として機能します。

 

3. ゴールドとシルバーの違い

ゴールドの価格上昇に対し、シルバーやゴールド採掘会社の株価はそれほどの上昇を見せていません。これは、シルバーが「ゴールドの強化版」として見なされながらも、30ドルの壁を突破できていないことや、ゴールド採掘業界が市場での評価が低いことに起因しています。この現象は、ゴールドの持つ独自の価値が再評価されていることを示唆しています。

 

4. ゴールドの本質的な価値とは?

ゴールドの価格上昇を理解するためには、その本質的な価値について考えることが重要です。

ゴールドは、周期表の中で最も「お金」として適した元素であり、その耐久性、均質性、分割可能性が特徴です。

さらに、採掘されるゴールドの量は緩やかに増加するため、供給の急増によって価値が下がるリスクが少ないのです。

 

5. ゴールドの歴史的役割と現在の意味

ゴールドは便利な通貨とは言えませんが、歴史的には信用性の高い資産として機能してきました。

たとえば、経済システムが崩壊した場合、ゴールドはその内在的な価値により、他の資産に比べて安全な避難先となります。

これは、必ずしも世界全体が混乱する「終末シナリオ」のみを意味するものではなく、一国の経済や政治的安定が揺らぐ状況でも同様です。

 

6.中央銀行がゴールドを買い始めた理由

今回のゴールドのブルマーケットは、中央銀行が積極的に買い手として市場に参入している点が際立っています。

最近では、中国、トルコ、ロシアをはじめとする多くの国の中央銀行が、外貨準備の一部として大量のゴールドを買い足していることが報告されています。

これらの国々は、地政学的リスクの高まりや、ドルに対する依存度を減らすための手段としてゴールドの保有を強化しているのです

特に、アメリカの制裁リスクやドルシステムからの切り離しを懸念する国々が、ゴールドを再評価し、その保有量を増やしているのです。

このように、地政学的リスクが高まる中で、ゴールドの重要性が再び認識され、中央銀行の間でその需要が急速に拡大しています。

 

7. ゴールドの持つ意味を考える

現在、米ドルの世界的な覇権が一部で疑問視される中、ゴールドの重要性が再認識されています。

ロシアが世界の金融システムから切り離された例に見られるように、もし自国が世界的な貨幣システムから排除されるリスクがあると考えた場合、「バックアップマネー」としてのゴールドの価値が浮上してきます。


まとめ

ゴールドの価格上昇は、「バックアップマネー」としての価値が再評価されていることに起因しています。特に、地政学的リスクや経済的不安が高まる中で、ゴールドは信頼性の高い資産として再び注目を集めています。

個人投資家にとって、ゴールドはポートフォリオの保険として、長期的に保持すべき資産です。

このように、ゴールドの持つ多様な役割を理解し、適切に活用することが、長期的な資産形成において重要となります。

 

参考資料:Gold Is Rising Because of Demand for ‘Fallback Money’