引用元:Howard Marks(Oaktree Capital Management) 原題:「What's Going on in Private Credit?」 発行日:2026年4月9日
結論から言う。
プライベートクレジット、特にダイレクトレンディングは今、バブルの後始末フェーズに入った。 💣
ハワード・マークスが4月9日に公開した最新メモはそう読める。以下、要点を整理する。
目次
📜 クレジット市場の進化——50年の歴史を3分で
マークスはまず、クレジット市場の変遷を整理している。
| 年代 | 出来事 |
|---|---|
| 1970年代 | 投資不適格債(ハイイールド債)の誕生 |
| 1980年代 | LBO(レバレッジド・バイアウト)の普及 |
| 1990年代 | シンジケートローンとCLOの台頭 |
| 2000年代 | オルタナティブ投資ブーム・サブプライム危機 |
| 2010年代 | ダイレクトレンディングの拡大 |
| 2020年代 | 個人・年金口座向けへの販売開始 |
2008年の金融危機で銀行が傷つき規制が厳しくなった結果、銀行の代わりに非銀行の貸し手(プライベートクレジット)が登場した。その最大の柱が「ダイレクトレンディング」——中堅の非公開企業への直接融資だ。
20年前に1,500億ドル規模だったプライベートクレジット市場は、今や2兆ドル超の巨大市場になっている。💰
🔄 バブルの法則——いつも同じパターン
マークスは、あらゆる投資バブルに共通するパターンを指摘する。
- 🆕 新しいものには欠点がまだ見えない
- ✅ 初期投資家は実際に儲かる
- 😤 「乗り遅れた」嫉妬が後続を呼び込む
- 💭 「可能性」が「確実性」にすり替わる
- 🐑 後から来た者ほど高値をつかむ
マークスの言葉を借りれば——
「賢者が最初にやることを、愚者が最後にやる」(ウォーレン・バフェットの言葉として引用)
ダイレクトレンディングも例外ではなかった。
💻 問題の核心——ソフトウェア債務という爆弾
ここが今回のメモの急所だ。
プライベートエクイティ(PE)はソフトウェア企業を好んで買収した。
理由はシンプルで、サブスクリプション収益が安定していて銀行融資(=PE買収)に向いていたからだ。
その結果、ダイレクトレンディング市場に占めるソフトウェア企業向け融資の割合は**20〜30%**に達していた。
しかし2025年後半から状況が一変する。
AIがソフトウェア開発者の仕事を代替し始めた。 🤖
2025年11月にAnthropicが強力なコーディングモデルをリリースし、翌1月には複数分野のタスク自動化プラグインを公開。「ソフトウェア企業の競争優位が崩れる」という懸念が一気に広がった。
- 投資家が半流動性の公開ビークル(BDC)から資金引き出しを要求
- 引き出し制限が設けられ、投資家の不安がさらに拡大
- 「NAV(純資産価値)は本当に正確か?」という疑念が浮上
- ソフトウェア債務全体が売られる展開に
🏛️ 1929年との類比——マークスが読んでいた本
マークスはAndrew Ross Sorkinの著書『1929年——ウォール街史上最大の暴落』に触れ、当時のバブルを生んだ三要素を抽出している。
- 適合性を無視した個人投資家への販売
- 過剰なレバレッジの提供
- 資産の非流動性と短期借入の期間ミスマッチ
これが今のダイレクトレンディングと重なる、とマークスは示唆している。
- 個人・年金投資家への販売拡大
- ビークルに内蔵されたレバレッジ
- 私的な貸付の非流動性
歴史は繰り返さないが、韻を踏む。📚
🛡️ Oaktreeはどう動いたか
ここは正直に読む必要がある。これはOaktreeの投資家向けメモだ。自社の正当性を説明するバイアスは当然ある。
それを踏まえた上で、マークスが語る自社の立場は以下の通り。
- ダイレクトレンディングへの傾斜を意図的に抑えた
- 「プライベートクレジット」より「クレジット全般」を重視し続けた
- ソフトウェア向け融資の比率を競合より大幅に低く維持
- 個人投資家向けの資産は全体の20%以下にとどめた
「規律を守って人気の波に乗らなかったことが、今、機会をもたらしつつある」というのが彼の結論だ。
🎯 投資家として何を考えるか
このメモを日本の個人投資家目線で読み直すと、直接的な影響は限られる。ダイレクトレンディングの公開ビークル(BDC)に日本の個人が大量に入っているケースは少ないからだ。
ただし、間接的な影響を3点整理しておく。
- プライベートエクイティの収益悪化→PEが保有する企業の売却困難→M&A市場の停滞 日本でも外資PEが絡む案件への影響が出る可能性がある。
- AIによるソフトウェア企業の価値毀損は日本でも同じ SaaS系・システム開発系の日本株も同様の視点で再評価が必要だ。
- 「流動性があると思っていたら違った」という教訓 非上場・半流動性の商品に手を出す際の警戒心を常に持つこと。
マークスの締めの一節が刺さる。
「真の信者はバブルで最も儲け、懐疑論者はバブル崩壊で最も失わない。しかし目指すべきは、信念と疑念の健全なバランスを常に保つことだ。」
俺が小型バリュー株の段階買いにこだわるのも、突き詰めればこれだ。流行を追わず、歪みが最大化した場所で、懐疑論者として静かに待つ。
それだけだ。🎯
※本記事はOaktree Capital Management Howard Marks氏のメモ「What's Going on in Private Credit?」(2026年4月9日)を元に、個人の解釈・考察を加えてリライトしたものです。原文の著作権はOaktree Capital Managementに帰属します。投資判断はご自身の責任で。