前回の「EVシフトの停滞」とは対照的に、今まさに指数関数的な成長の渦中にあるのが半導体、とりわけエヌビディアとTSMCの連合体だ。
『週刊エコノミスト』の特集「エヌビディア、TSMCのすごさは?」を読み、改めてこの2社が築き上げた「堀(経済的溝)」の深さに感銘した。
1. 40年サイクルで動く「テクノロジーの地殻変動」
自分が誌面にメモした通り、技術の主役はパソコンからインターネット、スマホ、そしてAIへと移り変わってきた。
記事によれば、この「AI時代」は2020年代以降、実に40年近くにわたって続く巨大な波になると予測されている。
単なるブームではなく、社会構造そのものを書き換えるOSの入れ替え作業なのだ。
エヌビディアの凄みは、単に「速いチップ」を作っていることではない。
CUDAという鉄壁:
開発者がAIを構築するためのプラットフォームを20年近くかけて囲い込んだ。
全要素の統合:
チップ単体ではなく、ソフト、ネットワーク、さらにはデータセンター全体の設計までを一手に引き受ける。
競合がチップの性能で追いつこうとした時には、すでに「エヌビディアなしではAIが動かない」エコシステムが完成しているのだ。
2. 「日本の凋落」という冷徹な教訓
一方で、この記事には日本の投資家として見過ごせない「対照的な歴史」が記されている。
1980年代まで世界の5割以上のシェアを握っていた日本の半導体企業は、なぜTSMCに抜かれたのか。
それは、1990年代のインターネットの波を「携帯電話の需要」程度にしか見誤り、巨額の設備投資を躊躇したからだ。
TSMCが地道に「製造受託」という新しいビジネスモデルを磨き上げ、資金調達の拒絶に遭いながらも投資を続けた結果が、現在の「1強」を生んだ。
3. 投資家としての「目」をどこに向けるか
エヌビディアは、今や時価総額で世界トップクラスに君臨し、売上高ランキングでも首位を独走している。
この「最強の勝者」に追随するのも一つの戦略だが、我々バリュー投資家が考えるべきは、「このAIインフラが整った後に、誰がその恩恵を最も受けるのか?」という点だ。
強力なGPUとTSMCの微細化技術が社会に行き渡った時、その上で動くサービスや、それを支える意外な周辺産業に、まだ見ぬ「お宝銘柄」が隠れているのではないか。