企業存続分析リポート

企業存続分析リポート:丸八倉庫(9313)

2026/01/12

目次

〜PBR0.48倍に沈む「倉庫という名の不動産会社」と、時間だけが味方する投資〜

※本銘柄の決算短信に基づく分析は、別途「企業サイト分析リポート」にて扱う。

🔔【重要な前提更新(2026/01/26)】

本レポートは2026年1月時点で作成された「企業存続分析リポート」であり、
当時は
・高い自己資本比率
・借入金の圧縮
・キャッシュの積み上がり
を前提に、**資産バスケット上位(A〜B境界)**として評価していた。

しかし直近の決算および企業サイト分析リポートでは、
・現預金の大幅減少
・長期借入金の再増加
・不動産投資ウエイトの上昇(金利上昇局面)
が確認され、
本銘柄の位置づけは
「資産バスケットBの下位(要監視)」へ引き下げて再評価している。

以下の本文は「当時の評価」を残したものであり、
現況判断は別途追記箇所を参照。

📌 このレポートの立ち位置

本レポートは「物流株としての成長」を語るものではない。

ココがポイント

狙いは明確👇

  • PBR0.48倍まで放置されている理由を構造的に整理
  • PBR1.0倍(解散価値)へ戻る最低条件を定義
  • 業績成長を期待せず、資産と時間で勝つ

👉 清原式・不動産含み益型の典型銘柄

「短期で株価が動かないことに耐えられない投資家は対象外」


📋 事業概要:どんな会社なのか

丸八倉庫は1897年創業。


事業内容はシンプルで、

  • 倉庫業(保管・物流)
  • 不動産賃貸(自社倉庫・土地)

実態を一言で言うと「物流会社という皮をかぶった、地味な不動産会社

派手さも成長ストーリーもないが、土地と建物は100年以上残っている

※補足(重要)
同社は創業100年超の倉庫会社であり、都内・湾岸部を中心に長期保有の土地・建物を多数保有している。

帳簿価額は取得原価ベースで計上されており、現在の地価・建築コストを考慮すれば、含み益の存在はほぼ確実と考えられる。(※正確な再評価額は非開示)


📊 財務分析(構造で見る)

PL:潰れないけど伸びもしない

① 売上高:成長企業ではないが、底は固い

売上高
20204,919
20214,823 ↓
20224,764 ↓
20234,972 ↑
20244,991 ↑
評価
  • 2020→2022:じりじり縮小
  • 2023→2024:回復して横ばい圏に復帰

👉 明確な結論
「成長はしていないが、需要は消えていない」

倉庫業+不動産の典型で、

  • 景気拡大期:伸びない
  • 景気後退期:急減しない

資産株としては理想的な売上の形


② 売上総利益:じわじわ削られている(重要)

売上総利益
20201,327
20211,297 ↓
20221,170 ↓
20231,159 ↓
20241,209 ↑

粗利率のイメージ

  • 2020:約27%
  • 2024:約24%台

評価

構造的に粗利率が低下

原因は明確👇

  • 人件費
  • 修繕費
  • 光熱費
  • 倉庫賃料の価格転嫁の遅さ

👉 インフレ耐性は弱い

ただし👇

2024年に下げ止まり → 反転

これは
👉 賃料改定
👉 コスト吸収が進んだ兆し


③ その他費用収益:ここが“PLのクセ”

その他費用収益
2020852
2021791 ↓
2022810 ↑
2023747 ↓
2024307 ↓↓↓

評価(かなり重要)

  • 2024年だけ異常に小さい
  • 理由は??
    👉 一時益・補助金・雑収入が剥落
    👉 or 一過性費用の消滅

👉 2024年は“PLが素直になった年”

これは👇

  • 悪い意味ではない
  • むしろ
    👉 利益の質が改善した可能性

④ 税引前利益・純利益:2024年は“事件”

税引前利益純利益
2020700474
2021742 ↑506 ↑
2022531 ↓360 ↓
2023616 ↑412 ↑
20241,325 ↑↑902 ↑↑

純利益率

  • 2020:9.6%
  • 2021:10.5%
  • 2022:7.6%
  • 2023:8.3%
  • 2024:18.1%

👉 ここが最大のポイント


⑤ 2024年は“本業が良くなった”のか?

結論から言う👇
NO(全面的ではない)

理由👇

  • 売上はほぼ横ばい
  • 粗利も微回復止まり
  • それなのに
    👉 純利益が2倍超

つまり👇
営業外・特別要因の寄与が大きい

考えられる中身:

  • 不動産関連益
  • 減価償却負担の軽減
  • 金融収益
  • 一過性要因

👉 再現性は低い


BS:PBR0.48倍が示す“市場の無関心”

① 総資産の質:これは「倉庫業という名の不動産会社」

項目20202024
総資産16,99718,832
有形固定資産13,17613,454
比率77.5%71.4%
評価

総資産の7割以上が有形固定資産

中身はほぼ👇

👉 倉庫
👉 物流施設
👉 土地

👉 事業=不動産そのもの

これは👇

  • 減価償却でPLは地味
  • だが
    👉 清算価値はPLよりはるかに大きい

PBRが低くなる“構造的理由”でもある


② 現預金:2024年に異常値

現預金
2022932
20231,064
20242,196
評価

1年で**+1,132百万円**

これは👇
👉 2024年の純利益902百万円
👉 借入返済一巡
👉 大型投資なし

が重なった結果。

👉 キャッシュ創出力が一気に可視化された年

※追記(2026/01時点)

2024年の現預金急増は一時的であり、
2025年には
・賃貸マンション2棟の取得
・長期借入金の増加
により、
現預金は約21.9億円 → 約7.2億円へ急減している。

その結果、
「キャッシュが積み上がる企業」から
「キャッシュを使って回す企業」へ性格が変化した

点には注意が必要。


③ 投資その他資産:地味だが超重要

投資等
20201,900
20242,686

評価

+786百万円増

中身は👇
👉 政策保有株
👉 関連会社株
👉 不動産関連

👉 含み益がPLに出ていない可能性が高い

ここが👇
PBR0.4倍の“本当の歪み”


④ 負債構造:当時は美しかったが、現在は再検証が必要

固定負債(=主に借入金)
固定負債
20215,466(ピーク)
20243,554

👉 3年間で約▲1,900百万円

流動負債
流動負債
20202,571
20243,162
  • こちらは微増
  • 運転資金の範囲内
結論

👉 借金は明確に減っている

※追記(2026/01時点)

2025年以降、
長期借入金は
約35億円 → 約44億円へ再び増加しており、
デレバレッジ局面は終了した可能性が高い。

特に、
金利上昇局面で
不動産事業への投資比率を高めている点は、
財務安全性という観点では
明確なマイナス方向の変化と評価する。


⑤ 純資産:静かに、だが確実に積み上がる

純資産
20209,866
202412,117
  • +2,251百万円
  • 年平均 +560百万円

👉 内部留保で着実に太るタイプ

自己資本比率(概算)👇

  • 2020:約58%
  • 2024:約64%

👉 異常に高い


CF:清原式が許容する最低ライン

① 営業CF:文句なしの合格点

営業CF
2020954
2021730 ↓
20221,026 ↑
20231,146 ↑
2024850 ↓
評価
  • 5年連続プラス
  • 平均:約940百万円

👉 本業は
「稼げない年がない」

2024年の減少理由👇

  • 純利益は急増したが
  • 運転資金の増減
  • 一時的要因
    が出た可能性

👉 質が悪化したわけではない


② 投資CF:2024年は“異常値(良い意味)”

投資CF
2020-1,530
2021-2,016
2022-648
2023-166
2024+1,150
ここが最大の注目点

通常👇

  • 倉庫・不動産業
  • 投資CFはマイナスが当たり前(設備・土地)

しかし👇
2024年は +1,150

意味するのは👇

  • 不動産売却
  • 有価証券売却
  • 投資回収フェーズ突入

👉 資産を「現金化」した年

※追記

2024年は資産回収フェーズと評価したが、
その後の2025年に
・不動産取得
・借入金増加
が確認されたため、
長期的な資産圧縮・還元フェーズに入ったとは言い切れない。

一時的な回収 → 再投資という
循環型モデルへ移行した可能性を考慮する必要がある。

これは👇

  • BSの現預金急増
  • 固定資産の減少
    と完全に一致。

③ 財務CF:ここが“企業の人格”

財務CF
2020+670
2021+934
2022-494
2023-848
2024-868
評価
  • 前半:借りていた
  • 後半:返している

👉 明確な
デレバレッジ(借金圧縮)

  • 株主還元で無理をしていない
  • レバレッジもかけない

👉 極端に保守的


④ 現預金の増減:すべて説明がつく

現預金増減
2021-352
2022-116
2023+131
2024+1,132
2024年の式👇
  • 営業CF:+850
  • 投資CF:+1,150
  • 財務CF:-868

👉 +1,132

👉 完璧に整合。


🧩 セグメント・構造分析

丸八倉庫は実質二層構造。

  • 倉庫事業
    👉 キャッシュ創出・稼働維持
  • 不動産(土地・建物)
    👉 PBRを下支えする“本体価値”

市場は前者しか見ていない。
👉 後者(資産価値)は完全に無視されている


💡 なぜPBR0.48倍なのか(辛口)

理由は明確。

  • 成長しない
  • ROEが低い
  • 株主還元が弱い
  • 経営から「株価を上げる意思」が見えない

👉 「正しい評価」ではなく「無関心」


💡 評価が変わる“最低条件”

夢の話はしない。

シナリオ①【インフレ×不動産再評価】⭐ 最有力

  • インフレ定着
  • 倉庫・土地の再評価

👉 企業が何もしなくてもPBR是正が起こり得る

「これは“能動的材料”ではなく“環境圧力型の是正”」

※重要な留意点

現在は
・不動産取得による資金流出
・借入金増加
が進行しており、
インフレ=自動的なPBR是正
とはなりにくい局面に入っている。

資産再評価が起きる前に、
財務余力が削られるリスクも併せて監視が必要。


シナリオ②【株主還元の明確化】

  • 配当性向引き上げ
  • DOE導入
  • 小規模な自社株買い

👉 これだけで、PBR0.7〜0.8倍は現実的


シナリオ③【物流テーマ再燃】

  • EC・医薬・冷凍物流

👉 期待はできるが、主因にはしない


🎯 結論
①だけでPBR0.7倍
②が出ればPBR1.0倍が見える

※注意点
PBR1.0倍は、あくまで「条件付きシナリオ」であり、自然回帰で到達する水準ではない。

実現には、
・明確な還元方針の転換
・資産の顕在化(売却・再評価)
・外部環境(インフレ・不動産評価)の後押し
が同時に重なる必要がある。


📈 最新バリュエーション(2026/01/14)

  • 株価:1,055円
  • 時価総額:77億円
  • PER:14.2倍
  • PBR:0.49倍
  • 配当利回り:2.46%
  • 信用倍率:対象外(需給は極めて軽い)

👉 上がらない理由は「割安ではない」からではなく、「注目されていない」から


🛡️ 清原式・最終投資戦略

🎯 狙うのはここだけ

週足のDBの最下点900円にアラート設定で周辺にくれば仕込む

価格帯意味
PBR0.5倍割れ先遣隊
PBR0.45倍主力
市場急落時最大仕込み

👉 上値追いは一切しない
👉 歪みが最大化した時だけ買う

900円水準は、PBRが0.45倍前後まで低下するゾーンであり、不動産含み益・財務安全性を考慮すると、「解散価値からの乖離」が最大化する水準と考える。

テクニカルはあくまで補助であり、本質はPBR0.5倍割れという歪みの深さにある。


🚪 出口戦略

第一出口(是正ライン)

  • PBR0.7倍
  • 株価目安:1,500円前後

👉 ここで半分以上は利確


第二出口(事件発生時)

  • PBR1.0倍
  • 株価目安:2,100円前後
  • 条件:
    還元強化
    自社株買い
    資産の顕在化

👉 材料確認後、全利確


🏁 最終結論

🔄【現況アップデート】

本銘柄は現在、

・資産バスケットA:❌
・資産バスケットB:⭕(下位・要監視)

という位置づけが妥当。

「時間を味方にできる銘柄」である点は変わらないが、
無条件で放置できる状態ではなく、

・借入金の推移
・不動産投資の収益性
・現預金水準

を定点観測する
アラート管理銘柄へ格下げする。

丸八倉庫は、

  • 成長しない
  • 期待もされていない
  • 人気もない

だが、

  • PBR0.48倍
  • 土地は逃げない
  • 会社は潰れない

だからこそ👇

「時間を味方にできる投資家だけが触れる銘柄」

毎四半期で答えを求める投資家にとっては、何も起きない“退屈な罠”に見えるだろう。

PBR0.48倍は異常。
PBR1.0倍は**“何か起きれば”現実的**。

清原式の鉄則通り、歪みだけを拾い、是正された分だけ取る。